(1)資格・経歴ではなく、可能性・潜在能力を見る

 どんな技術的スキルでも(たとえば、ある人気のプログラミング言語への精通など)、ライフサイクルはせいぜい2年程度で変わる。つまり、技術的な専門知識の賞味期限はすぐに切れてしまうわけだ。したがって、好奇心が強く、変化への適応能力が高く、迅速に学べる人のほうが、候補者としてはより有望かもしれない。

 我々の調査における優秀企業(デジタル施策のための人材確保に最も長けた企業)と、そうでない企業を比べると、前者のほうが採用対象の範囲が広い。

 準学士号取得者(2年生大学や一般教養課程の修了者)を採用する傾向は、前者が81%、後者は39%であった。また、専門学校や職業訓練学校の卒業生を採用する傾向は73%対39%、軍勤務を経て再就職に臨む人については76%対29%、子育てで仕事を休んでいた人については71%対24%であった。

 10代で働く人や、大学の学費補助を受けるために軍に入った人は、より恵まれた境遇の候補者よりも、意欲、再起力、機敏性、チームワークなどの面で優れている可能性がある。

 一例としてユニリーバは、以前は少数の大学から候補者を選んでいたが、いまではオンラインゲームやビデオ面接を通じて、はるかに広範な対象から人材を選んでいる。選抜作業のほとんどはAIのアルゴリズムが行い、採用にかかる時間とコストを減らしている。

 同社は現在までにこの方法で28万件の応募を処理し、最終面接に到達した候補者のオファー受諾率は2倍に増えた。その過程で、従業員の性別、民族性、社会経済的地位が大幅に多様化している。

(2)技術的スキルと同程度に、ソフトスキルも重視する

 かつてIT開発とは、仕様を書いて、それをプログラミングすることであった。しかし今日では、問題を見つけてソリューションを生み出すことが中心となっている。たとえば、顧客や従業員と会社とのコミュニケーション向上を主眼とするデジタル化施策では、いわゆるソフトスキルのほうが、技術的スキルよりも重要だ。

 我々の調査結果の中で、デジタル施策において必要とされているスキルの上位3つは、チームワーク(回答者の74%)、リーダーシップ(70%)、コミュニケーション(68%)であり、どれもソフトスキルである。その次がユーザーエクスペリエンス(67%)およびアナリティクス(67%)、つまり技術的スキルだ。

 ソフトウェアのプラットフォーム、システムおよびサービスの世界的なプロバイダー、カリックスでソフトウェア開発のリーダーを務めるミシェル・ラングロワは、次のように述べている。

「私たちにとって最大の課題は、当社のデジタル化を前進させてくれる人材を見つけることです。プログラミング言語をいくつ知っているかよりも、適応能力のほうが重要かもしれません。必要なのは、他者と協働でき、間違いを認めることができ、立ち直りが早い人です。

 以前は当社も、候補者のプログラミングのスキルと技術力のみに着目していました。いまはそれだけでなく、候補者の意欲、クリティカルシンキング能力や創造性、協働力なども評価しています。これらでスコアが低い場合は採用を見送ります」

(3)個々の人材よりもチームのことを考える

 企業は常に、博士号やMBAの取得者を求め、将来のリーダー候補として育てようとする。しかし、我々の調査における優秀企業とそうでない企業を比べると、STEM(科学、技術、工学、数学)以外の学位取得者を採用する傾向は前者が格段に高く(76%対39%)、非大卒で適性スコアが高い人についても同様であった(71%対38%)。そして、チームへの貴重な貢献者となれる人材ならば、専門学校や職業訓練学校の卒業者もより多く採用している。

 機敏に動く組織やチームのリーダーは、最も立派な肩書や広範な管理責任を持つ人とは限らない。2年制大学を出て採用されたプログラマーは、執行役員にはならないかもしれないが、チームの貴重な戦力にはなりうる。

 ウォールブレイカーズ(Wallbreakers)は、コンピュータサイエンスの学位を持ちながら就職できない人たちに、大手企業との面接の訓練と機会を提供する企業だ。共同経営者のアンドレア・グエンデルマンは、次のように述べる。

「企業はデジタル施策を実行するために、複数のスキルを必要とします。理想的には一人ですべてのスキルを兼ね備えた人材を見つけたいのでしょうが、それはできないため、チームを編成しなければなりません。当社は候補者を評価するとき、チームと協働する能力を最重要事項の一つとして見ています」

 グエンデルマンの説明によれば、有望な候補者はウォールブレイカーズの6週間の研修に参加し、データ構造、アルゴリズム、ソフトスキル、チームワークを学ぶ。そして受講者の半数は、希望する仕事に就いているという。

(4)従業員の成長意欲を高める

 我々の調査における優秀企業とそうでない企業を比べると、より高度のスキル習得に対してより多くの報酬を与える傾向は、前者のほうが顕著に高く(67%対41%)、特典(64%対23%)と責任(78%対58%)についても同様に多くを与えている。

 しかし意外なことに、研修の機会については、前者のほうがわずかに多い程度だ。従来型の講義形式での研修は48%対47%、最新のツールによる研修(場所や時間を選ばず受講できるオンライン講座など)は53%対49%であった。

 マネジャーらの話を聞くと、その理由が明らかになった。従業員は、継続的にスキルをアップグレードする必要性を認識している。そのために彼らはさまざまな手段を取ることができ、なかでも最も利用しやすいのはオンラインである。もしもある人が、機械学習や、プログラミング言語のPythonやR(どれも需要が高い技術スキルだ)で資格を取りたい場合、オンラインには無料または手頃な価格の講座があり、勤務時間中やプライベートの時間に(自由に)受講できるわけだ。

 企業はひとたび有望な人材を採用したら、学習の機会とインセンティブを提供しなければならない。だが、そこから先の教育は、企業が手取り足取り行う必要はないということだ。


HBR.org原文:How to Develop a Talent Pipeline for Your Digital Transformation, November 27, 2019.


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