ここでいう3軸方向の1つ目は、ペルソナのディープ化だ。ディープなデータとAI(人工知能)による深い分析により、ペルソナの解像度が格段に上がり、そこから多くのインサイトを得て、より的確なCXを実現できる。

 2つ目は、時系列変化への即応。例えば、半年前と現時点でのペルソナの変化をデータとAIによって明らかにすることができる。

 3つ目はペルソナを量産できることによるカバレッジの拡張。従来はせいぜい数パターンしかできなかった深いペルソナ分析を、100、200と増やすことが可能だ。

 小売店舗でのマーケティングを例に説明しよう。来店した顧客一人ひとりの「今」の属性と行動、感情などを、画像認識などを活用することで解明できるようになった結果、深い理解に基づくアクションを一人ひとりに対して起こすことができる。例えば、各人のそのときの感情とそれに基づく行動を踏まえて、陳列棚に設置したデジタルサイネージに最適なプロモーション映像を表示するといったアクションだ。

「ペルソナを設定しカスタマージャーニーを描いても、現実の顧客がその通りに行動するとは限らないので、従来はその瞬間に最も効果的なアクションを起こすことができませんでした。しかし、データとテクノロジーの進化によって、まさにその瞬間を逃さず捉え、個客対応を実践することが可能になったのです」(則武氏)。

 デジタル空間に限定すれば、これまでもレコメンドなど個客に応じたCXは部分的に実行されてきたが、それがリアル空間でも実践できるようになったのだ。

 ペルソナの立体的な分析と、それに基づく立体的なアクションを実行するためには、「データ群」「インサイト群」「CX(アクション)群」の連動を強固にし、データにテコを利かせることが重要になる。これをベイカレントでは、「データレバレッジ」と呼んでいる。AIによる分析でデータにテコを利かせてインサイトへと転換し、そのインサイトに基づくアクションを通じてCXを向上させるのだ。

 この連動を強固にするには、CXをKGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)へ展開し、KPIを向上させ得るデータの調達・分析を、CX起点で考えることから始める。「どのようなCXを実現したいかを考え、それを分解して、どのようなデータを調達すべきかを決めるのです」(則武氏)。

 一方で、データ起点の有効性も見逃せない。特に顧客接点の最前線に立つ経験豊富な現場担当者ほど、データを眺めるうちにさまざまなアイデアが膨らむものだ。そうした場合には、データから得られたインサイトと目指すCXとの適合性を常にチェックすることが不可欠だ。