分科会レポート2:

「国際貿易におけるテクノロジー」
複雑化する自動車のバリューチェーン
関税コスト管理でシステム化を検討

トヨタ自動車
営業業務部FTAグループ長
森脇英直氏

 この分科会では、トヨタ自動車営業業務部FTAグループ長の森脇英直氏が、データを活用した関税コスト管理プロジェクトについて紹介した。

 たとえば、日本で生産した完成車をマレーシアに輸出すると、関税30%に加えて物品税もかかり、経済連携協定(EPA)を利用するかしないかで、税コストの負担は約190万円の差が生じ、EPAの取得がビジネス成立の必要条件となっている。

 近年ではグローバル・バリューチェーン(GVC)の高度化・複雑化により、完成車が出来上がるまでに複数回国境を超えることも珍しくない。国境を超えるたびにかかる輸送費や保険費、そして関税をどうマネジメントするかは、重要な経営課題となっている。

 そのため、我が国の自動車業界では現在、完成車メーカーと部品メーカーが一丸となり、EPA活用のための仕組みの構築(システム化)を進めている最中で、2020年半ばには活用を開始する予定だ。この仕組みでは、EPA活用に必要となる部品メーカーとの原産性調査のやりとりの部分の効率化と精度向上を狙っている。

 またトヨタ社内でも、EPA適用を受けるために必要なHSコード(商品の名称及び分類についての国際統一コード)を管理する業務の標準化・効率化を目指し、ツール導入を検討中である。

 一方、直近では中国で新型コロナウイルスが蔓延し、日本企業の工場が操業停止に追い込まれる事態も発生した。関税だけでなく感染症、気候変動など管理すべきリスク要因は増える一方だ。

「近年いろいろな完成車メーカー、部品メーカーとのビジネスが広がり、新しい商流が生まれている。オペレーションはますます複雑になるだろう」と森脇氏は見ている。

「自動車産業はすそ野が広いので、思いもよらないことでGVC全体に影響が及ぶ。GVCを把握する仕組みはすでに準備しているが、リスクの備えに向けて一層強化していく必要がある」と森脇氏は語った。

分科会レポート3:

「都市の未来とdX」
官民一体でスマートシティ化を進める
ポルトガルのカスカイス市

東京都市大学
総合研究所教授
パナソニック
ビジネスイノベーション本部
事業戦略担当
葉村真樹氏

「Future of Cities(都市の未来)とdX」と題した分科会では、第2部のパネルディスカッションでも登壇した東京都市大学教授の葉村真樹氏を迎え、快適かつ効率的な都市づくりについて議論した。

 デロイトでは2015年から、ポルトガルの首都リスボン近郊にあるリゾート地、カスカイス市のスマートシティプロジェクトについて、初期のビジョン形成の段階から都市OSの実装、運用まで一気通貫のサポートを行っている。同市では、①市民参画、②契約構造の変革、③市民への還元という3ステップで、都市の再設計を進めている。

 市民中心の意思決定メカニズムに転換するために、市民との対話を実施したところ、多くの人が慢性的な交通渋滞の緩和と移動の不便さの解消を切望していることがわかった。

 そこで同市は、行政と大学、市民団体、企業などが参画するコンソーシアムを設立。交通渋滞を解消する最適なアプローチについて検討を重ねた結果、バス運行や道路整備など「公共交通」の運営にかかわる事業者との契約を行政が一括委託し、交通に関わる不具合の確認や対処・判断や意思決定がスムーズに行えるよう契約形態を大きく変更した。

 また、公共交通にかかわるすべてのオペレーションを横断的に行う「コマンドセンター」を立ち上げ、同センターが各所に設置されたセンサーなどで収集したデータをデロイトが提供する都市OS「CitySynergy®」で一元管理し、問題が発生した際に迅速に対処できる体制を整えた。

 こうした仕組みを整備するにあたりカスカイス市は、参画する企業がサービスを通じて得たデータを市に提供する場合、法人税を減免するなどの措置をとった。これによりデータのオープン化が促進され、民間事業者が参入しやすい環境がつくられた。

 そして、同市は過去3年間で公共交通機関の運用コストを約30%削減することに成功。公共交通機関の無料化など市民への還元策を検討している。

 葉村氏は、「行政がみずからを大変革するインサイドアウトの発想で始めながらも、そのアプローチは外部から良いものを積極的に取り入れるアウトサイドインで進めており、これが成功の秘訣だ」とコメントした。

*登壇者の肩書きは、すべて2020年1月のイベント開催当時

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