多くの女性がそうであるように、私も更年期になったとき、本能的にその症状を隠そうとした。それは、妊娠したときとは対照的な態度だった。妊娠中は、物忘れがひどくなったり、疲れやすくなったりしたことを周囲に打ち明けることに迷いはなかった。周囲の男性も女性も、事情を理解して笑い飛ばしたり、優しく接してくれたりした。

 けれども、更年期は違った。GPSを利用しても道に迷ったり、大切な打ち合わせに遅刻したり、スケジュールのダブルブッキングやトリプルブッキングをしたり、航空便に乗り遅れたり、ほんの数分前に誰かに言われたことを忘れてしまったりすることが増えても、更年期障害なのだとは言い出せなかった。

 更年期の症状があらわれ始めたのは48歳のとき。てっきり、若年性のアルツハイマー病だと思った。

 自分の抱えている問題を職場で打ち明けるのが怖くて、忘れっぽくなった理由を取り繕うようになった。出世のチャンスにも腰が引けてしまった。重要なことを忘れてばかりいるのに、いまよりさらに大きな責任を担うわけにはいかないと思ったのだ。更年期障害だと医師から言われたときは、ほっとしたし、驚きもした。

 私がこの経験について話すと、ほかの女性たちも口々に、更年期の症状に悩まされながら仕事をすることの難しさを語ってくれた。

「200人の業界専門家の前で重要なパネルディスカッションの進行役を務める経験は、キャリアのハイライトになったはずだったのに、実際は最悪の経験になってしまった」と、バイオテクノロジー企業の副社長を務める46歳のサンダラ(仮名)は言った。

「混乱と自己不信、極度の不安の日々が続いて、私のキャリア全体が台無しになった」と、テクノロジー企業の幹部である51歳のエニア(仮名)は語った。

 エニアの場合は、更年期の症状が非常に深刻になり、2年間にわたり360度評価で厳しい評価を受け続け、仕事のパフォーマンスも悪化して、ついに職を失った。現在は、ダイバーシティとインクルージョンに関するコンサルタントとして活動し、女性の健康に関わる諸問題に配慮しようと考える企業に助言している。

 皮肉なことに、以前の勤務先の会社も、いまはコンサルティングの顧客になっている。エニアは今日、以前とは打って変わって幸せで健康的な日々を送っているという。