内発的動機を認め合い、それを力にする
日本人らしいセルフリーダーシップがあってもいい

入山 プログラムの主催者が話すには、私が参加した時は気温もマイナス20度くらいでいつもより天候が良かったみたいです。寒さが足りず、内省が進まなかったのかもしれません(笑)。手前味噌ですが、おそらく私が幸せに働けている理由は、30歳で突如会社をやめてアメリカに行ったり、現地でグリーンカード(永久在住権)まで取ったのに帰国したりと、「行き当たりばったり」の人生なので、結果としていつも、人生の軸・やりたいことを自分で考えて決めているからだと思います。図らずも勝手にセルフリーダーシップが身に付いていた、と。

 もちろん私が偉いわけでもないし、大学教授と会社員では置かれている立場が異なるので一概には言えません。ただ、大きな企業で働いていると、上司から振られた仕事をこなすことに追われ、自分がやりたいことや目指すべき軸を考えたり、言語化したりする機会が少ないのだと思います。すると自分の軸がわからないから、どこに向けて自分をリードすべきかもわからない。

 プログラムに参加して学んだのは「幸せ」を言語化する重要性です。幸せは「もやっ」とした概念です。私は先のような経緯もあり、たまたま言語化できているのですが、それもここ数年のことですね。ちなみに、私が幸せに思う要素の1つを言語化すれば、「面白い」です。面白いことがとにかく好きで、知りたいし、体験もしたい。また、それを面白く語って伝えたいのです。

早稲田大学大学院
ビジネススクール教授
入山章栄
Iriyama Akie
慶應義塾大学経済学部卒業。三菱総合研究所を経て、米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.Dを取得。米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール アシスタントプロフェッサー、早稲田大学大学院ビジネススクール准教授を経て、現職。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているか』(英知出版、2012年)、『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP社、2015年)、『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社、2019年)。

前野 そのプログラムは、ネイティブアメリカンの儀式である「ビジョンクエスト」に似ていますね。成人する前に大自然の中に3日ぐらい1人でいて、自分のビジョンを探す。1人で内省して、本当にやりたいことを見つけたら、戻ってきて皆の前で発表するんです。

——幸せの「4つの因子」のうち、「やってみよう因子」とは主体性であり、主体的に働いている人は幸せを感じるということでしたが、他の因子についても教えていただけますか。

前野 第2が「ありがとう因子」、第3が「なんとかなる因子」、第4が「ありのままに因子」です。

「ありがとう因子」は、日本人なら直感的に理解できると思いますが、人とつながり、人に感謝し、人に親切にする人ほど幸せという因子です。「なんとかなる因子」は、ポジティブで楽観的である方が幸せということです。そして、「ありのままに因子」は米国で流行りの「オーセンティシティー」と似ており、簡単に言うと、ありのままの自分でいることです。

 日本人は欧米人と比べて「ありがとう因子」は高いものの、「なんとかなる因子」と「ありのままに因子」については、心配性で自己肯定感が低いため、高くないのではないかと思います。これには、遺伝的な要因も関係しているといわれます。

 例えば、心配性になりやすい気質には「セロトニントランスポーターSS型」という遺伝子が関係しており、それを持つ日本人は約8割と多いのに対し、欧米人は3割ぐらいしかない。つまり、日本人は元来から心配性で、自分1人で新しいことを決めて取り組むのが苦手な民族と考えられます。

■幸福学の研究から明らかになった幸せの「4つの因子」

(1)自己実現と成長の因子=やってみよう因子
  ・何かを主体的にやってみる。人に何と言われてもやってみる
  ・夢や目標を持ってそれを目指している人は幸福度が高い

(2)つながりと感謝の因子=ありがとう因子
  ・感謝できる相手がいる、人との豊かなつながりがある
  ・他人を幸せにしたいと思っている人は、幸福度が高い

(3)前向きと楽観の因子=なんとかなる因子
  ・自己受容できていて、楽観的でポジティブ。細かいことを気にしない
  ・自分はダメだとネガティブになってしまう人は幸福度が低い

(4)独立と自分らしさの因子=ありのままに因子
  ・人は人、自分は自分。自分らしく自分のペースでやっていく
  ・結果を評価するよりも、ありのままの強みや個性を評価する

入山 遺伝や過去の慣習が大きく影響しているというのは、興味深いですね。

前野 ただ、性格は遺伝要素が半分で、後天的な環境要因が半分といわれています。私が提案しているのは、日本人は1人でやると心配になりやすいのだから、組織的に皆で力を合わせる方法を考えるべきだということです。

 欧米型のリーダーシップをただ真似るのではなく、皆で励まし合えばいい。個人主義と集団主義の比較で言えば、日本は集団主義の傾向が強い。個人主義社会の人はみずからの軸を定めて走ることが得意な一方、集団主義社会では誰かと一緒にいないと不安になるから集団でいるわけです。

 皆が仲良くし、内発的動機を認め合い、それを力にする。日本人ならではのセルフリーダーシップがあるべきだと思います。

<後編(5月26日公開)に続く>

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