自分の人生を自分でリードする主体性は、
幸せに働くうえで極めて重要な因子

——幸せに働くにはどうすればいいのでしょうか?

入山 おそらく重要な1つはリーダーシップです。近年、経営学で注目が高まっているリーダーシップ理論として、「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」と「シェアード・リーダーシップ」があります。

 端的にいえば、トランスフォーメーショナル・リーダーシップは、「啓蒙型」です。リーダーにビジョンがあり、不確実な世の中において変革を先導するようなリーダーシップを指します。一方、シェアード・リーダーシップは、組織の全員がリーダーシップを発揮するスタイルです。リーダーのトップダウンで組織を動かすのではなく、全員が自立して互いにリーダーシップを発揮しあえる状態を指します。

 経営学では、リーダーシップとは「みずからが積極的にリードし、他人に影響を与えること」と定義されています。その意味では、周囲に対してリーダーシップを発揮する前提として、そもそも自分の人生の目的や軸がなくて自身すらリードできなければ、リーダーシップを発揮しようがない。これは予防医学者の石川善樹さんが言っていて、いい言葉だと思ったのですが、つまり、自分の人生を自身でリードできる「セルフリーダーシップ」が重要なのです。

前野 全く同感です。私は研究や調査結果から、幸せになるための4つの因子を提唱しているのですが、その第1因子が「やってみよう因子」と呼んでいるもので、言葉通り、主体性です。主体的に働いている人は幸せを感じる一方、会社や上司に言われるがままに受動的に働いている人の幸福度は低い。

 自分の人生を自分でリードする主体性は、幸せに働くうえで極めて重要な因子だと思います。パーソルグループの企業スローガンである「はたらいて、笑おう。」じゃないけれども、主体性を持って楽しく働くことこそが幸せに欠かせません。

入山 先日、リーダーシップ研修などを手掛けるIWNCと人事の世界で高名な八木洋介さんが行っている「リーダーシップジャーニー」というユニークなプログラムに参加しました。3泊4日でモンゴルの極寒の雪原の中で、自分の人生の軸を探し、マネジメントやリーダーシップに生かすというものです。

 参加者は日本を代表する大企業の経営幹部や幹部候補の方などが中心です。プログラムは、1組5人ぐらいのチームに分かれて、モンゴルの高原でライフチャートを作成し、メンバー同士で過去の人生を赤裸々に夜通し語り合います。プログラムの終盤では、馬に乗って吹雪の大雪原を移動するのですが、馬から降ろされて雪原に放り出されるのです。

前野 サバイバル・ツアーですね(笑)。

入山 もちろん裏では安全面に配慮されていますが、スタッフから「ゲル(移動式の家)がある方角はあちらです。各自それぞれ帰ってください」と言われ、極寒の中を1人で1時間くらい歩きます。その翌朝、雪原の小高い岩山に参加者が1人ずつ立ち、目指すべき人生の軸や、今後自分がやりたいことを5分で宣言するんです。

 宣言を聞いて印象的だったのは、大企業の経営幹部や候補生など選りすぐりの方々なのですが、それでも過去を否定する方が多かったことです。「自分の人生は間違っていた」「会社の中でやりたいことをしていなかった」「目指すべき人生の軸がなかった」と。私ぐらいですよ、不遜にも「自分の人生は最高だ!これからもこの方向でバリバリやります!」と叫んだのは(笑)。

前野 最高ですね(笑)。

入山 もう一つ印象的だったのが宣言の内容です。例えば、参加者の企業名がA社とすると、それだけ会社人生を否定していても、「残りの人生で目指したいのは、最高のA社マンになることです」と言う方もいたんです。もちろん、それが悪いことではないのですが、人生と会社が一体化しているなと。

前野 それだけ過酷な環境でも、会社への帰属意識が抜けないのですね。