過去の協働関係による不利益を最小化する

 我々の調査は、マネジャーが取ることができる対策をいくつか示唆している。

 第1に、強敵との競争に関して言えば、コンサルタントや銀行、弁護士、元従業員などから紹介された、相手方の内部情報を提供してくれそうな有力なコネクションを持つ人物の約束に浮かれないことだ。自社とも競合とも協力関係を結べる関係性は、それ自体が忠誠心を疑わせる。

 それでもライバルとのつながりを持つ人物を雇うならば、疑心暗鬼と必要以上の監視という大きな犠牲を覚悟しよう。この点では、自分が直接知っている、あるいは信頼できる筋から紹介された外部のアドバイザーを選ぶことが極めて重要だ。

 さらに、以前は協力関係だった企業が敵対関係に変わったとき、過去の協働関係による不利益が大きくなることを思い出そう。それぞれがかつて協力関係にあった人物を代理人として迎える場合、競合する企業はどちらも互いに一歩引いて、目の前の問題に集中すること。自分たちの競争心が、その取引から得られる共通の利益を阻害しないようにすることが重要だ。この認識を持てなければ、代理人に対する不信感によって、代理人を価値の毀損につながる破壊的な行動に走らせる危険がある。

 第2に、アドバイザーの側は、自分のかつての人間関係が理由となり、現在のクライアントやステークホルダーが自分の忠誠心に疑問を抱く可能性があることを認識する必要がある。そして、忠誠心を示すために、攻撃的ではない方法を見つけよう。クライアントの代理人として、普段よりも入念に、徹底して職務を履行することが、彼らの疑念をやわらげる場合もある。たとえば、詳細な分析や事実に裏づけられたアドバイスを提供するなど、そのための努力を見える形で示そう。

 経験豊富なアドバイザーであれば、クライアントと真正面から、この状況に向き合ってみるのも一考である。そうした状況はよくあるという事実に加えて、これまでどう対処してきたかを、経験を交えて話す。ただし、こうした会話には準備と機転を要する。やり方を間違えると、せっかく問題をクリアにしてから前進しようとしたのに、むしろ問題に執着させることになりかねない。

 第3に、有効な心理的介入として、状況と、それに関係する人々とを切り離して考える。逆の見方をしてみよう。相手が別の人物だったなら、どのような態度を取っていただろうか。たとえば、あなたが以前の同僚の採用面接を担当しているとする。目の前に別の人が座っている状況を想像しよう。何のつながりもない人に対して、同じように確認の質問をしたり、同じような顔を見せたりするだろうか。

 パウロ・コエーリョによる有名な言葉がある。「忠誠心があるところで、武器は役に立たない」

 我々の調査は、この言葉がさまざまな点で真実であることを示唆している。忠誠心は、たしかに力による支配を不要にする。それでも忠誠心が二分される状況では、忠実であろう、あるいはそう見せようとすることそれ自体が、意図しない結果をもたらすことがある。

 忠誠心は、諸刃の剣である。そのリスクを甘く見てはいけない。


HBR.org原文:Balancing Competing Loyalties, February 03, 2020.


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