●政策立案者は遅れてはならない

 上述してきた変化のスピードは、政策立案者に対し、遅れずについていくという課題を突きつけている。特にデータのプライバシーとセキュリティについては、後手に回ってはならない。

 2年前に弾みがついたインドのデジタル経済への取り組みは、データ保護構想(Indian Data Protection Framework)の草案へと至った。これは、データの処理、保管、共有を行うすべての仲介者や企業を対象にデータのプライバシー基準を策定し、データの利用に関して個人ユーザーを後押しすることを企図している。データの所有者と生成者が、そのデータを共有したい相手に対し、最終的な――そして十分な説明と同意にもとづく――権限を持つ、という構想だ。

 たとえばある個人が、最も適切にカスタマイズされた健康保険制度を利用したいと望み、自分の健康データを他の保険会社とも共有したいとしよう。どのデータを共有し、どの保険会社がそれにアクセスできるか、どの期間それを許可するかについて、その個人が管理する権限を持つべきである。

 これが、新たなデータ保護構想の最終的な目標だ。完全な形で施行されれば、インディア・スタックを完成へと導き、単一の安全で使いやすいプラットフォームを通じて、データをより安全に共有できるようになる。

 2017年に筆者らが述べた構造的転換は、時には遅々として、摩擦を起こしつつ、時には急激に、動き続けている。だがこのデジタル改革のすそ野と可能性には、勇気づけられるものがある。障壁も、予期せぬ回り道もあるものの、インドはデジタルファースト・エコノミーに向かって前進を続けているのだ。

 このトランスフォーメーションの核心は、国によるデジタルインフラへの投資である。他の国々と同じようにインドでも、技術発展のスピードは政策の進展を上回り続けている。インドは第四次産業革命に向けてリープフロッグ的発展を遂げているかもしれないが、デジタルによる破壊的変化を通じて社会が変わりゆくストーリーは、まだ始まったばかりだ。


HBR.org原文:The Ups and Downs of India's Digital Transformation, May 06, 2019.


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