関係のアジリティを育む

 対立が起きたときに重要なのは、感情の流れをリセットして、共有する物語をつくることに加えて、新しい関係のあり方を積極的に試すことだ。それが「関係のアジリティ(敏捷性)」である。

 私たちは人間関係が壊れると「深く追及」して、問題となった出来事の解釈や望ましい解決方法を考えることにこだわりがちだ。しかし、立ち止まって柔軟な対応を考えてみれば──問題解決の新しい独創的なアプローチを考えてみれば──関係を修復できる可能性が高くなり、より強い関係に発展するかもしれない。

 人間関係の裂け目は、従来の関係がうまくいかなくなった兆候でもある。違うアプローチを試みれば、古いパターンを捨てて、より生産的な関わり方ができるかもしれない。もちろん、関係の機敏さを育むことは難しい。事態が緊張している場合は、なおさらだろう。そこで、次のような戦略がある。

 ●即興の準備をする

 優れた即興演奏には準備が必要だ。自分たちの関係は今後も順調だろう、ではなく、起こりそうな問題について、あらかじめ考えておくのだ。

 たとえば、リソースの配分や仕事量を再交渉が必要になったとしよう。まず、安易に同意を得られると思わないこと。むしろ、同僚が反対するかもしれない理由をあらかじめ考えて、対応を準備する。

 相手が自分は過小評価されていると感じないだろうか、自分の領域を過剰に守ろうとするのではないだろうかと、想像しよう。考えられる反論を検討しておけば、創造的な問題解決をすぐに提案できるだろう。

 ●想定外のことが起きたら、注意して、好奇心を持つ

 対人関係では、自分にはコントロールできないことや、準備をしていないことが突然、起きるものだ。同僚の反応が意外だったときは、自己防衛的な反応をするのではなく、「なぜだろう」と考える。あなたの何が原因だったのか、具体的に思い当たるだろうか。

 相手の反応は、相手の関心について貴重な情報をくれる。たとえば強い反応は、自分が攻撃されていると思っているかもしれない。同僚に別のオフィスへの移動を頼んだら、突然、泣き出したとしよう。そこで相手が泣いた理由に興味を持てば、それほどのストレスを感じるのはなぜかと、質問したくなるだろう。問題の根源がわかれば、相手と一緒に問題解決に取り組める。

 前向きな感情の流れをつくる、物語を共有する、関係のアジリティを育むという3つのアプローチは、深刻なダメージを受けた人間関係の修復にも役立つだろう。

 ただし、すべての関係が修復できるわけでは決してない。物理的に距離を取ることや、職場のひどく非生産的な人間関係の応急処置をすることが、最善の方法だという場合もある。たとえば、ハラスメントのように重大な出来事や、絶えず暴言を吐く上司のように長期間、継続している振る舞いが原因という場合がそうだ。

 あるいは、問題の人間関係にもはや価値がないときは、これら3つのアプローチを取ろうとしても、周囲は受け入れないだろう。しかし、そのようなときも、目の前の経験から学ぶことはできる。1つの人間関係が終わりを告げたときは、その経験と教訓を生かして、新しい人間関係の基盤を強固なものにしよう。


HBR.org原文:How to Mend a Work Relationship, February 14, 2020.


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