共有する物語をつくる

 対立から立ち直れるか、どのように修復できるかについては、その人間関係をめぐるストーリーも大きな要素になる。あなたが対立の原因だと思うことを説明して、相手にも説明を求め、それらをもとに、何がどうして起きたのかという共通の理解を組み立てる。

 それぞれの解釈が違ったり、否定的な解釈をしたりしている場合、その点に向き合わないままだと、関係を再構築するための共通の基盤は生まれない。たとえば、相手が自分の招いた痛みに気がついていなければ、謝罪をするという最初の重要な一歩を踏み出す可能性は低い。

 共有する物語をつくる目的の一つは、相手の意図について最悪ではなく最善の推測をすれば、許そう、和解しようという思いが高まりやすいことだ。共有する物語は、対立の原因はどちらか一方が「悪い」のではなく、むしろ互いの関係の欠点にあるのだと、双方が認識しやすくなる。

 たとえば、プロジェクトの予定が遅れたことについて、自分が悪い(自分がのめり込みすぎた)、同僚が悪い(彼らはプロジェクトを最優先しなかった)と思うのではなく、互いの振る舞いがどのような影響与えたかを考える(互いに進捗を確認する機会が少なかった)。失敗につながった関係は改善の必要があるが、そのために、より前向きな相関関係を築く方法が見えてくるだろう。

 共有する物語をつくるときは、次のようなポイントがある。

 ●何がうまくいかなかったのか?

 人間関係がうまくいかなくなった経緯について、相手の解釈を聞き、さらにあなたの見方を話す。素直に、自己防衛に走らずに、耳を傾けること。相手の話に即座に反応したり、自分なりに解釈したりせずに、しっかりと聞いて考えることができそうにないと思うときは、メールで意見を聞いてもいいだろう。

 ●「私」でも「あなた」でもなく「私たち」

 相手に注目するのではなく、一歩引いて、自分たちの関係に焦点を変える。互いの接し方の中に、人間関係が壊れた原因になる問題がなかっただろうか。相手を責めるよりも自分たちの関係に注目するほうが、根本的な原因が変えることのできるものかどうかを理解しやすいだろう。

 ●自分たちの歴史を振り返る

 専門家が繰り返し指摘しているように、過去を振り返ることと、長期的な人間関係の満足度には関連性がある。これを職場に当てはめると、同僚との前向きな経験について考える機会が多いほど、今回の否定的な出来事は例外なのだという物語をつくりやすくなる。

 感情が高揚したときのことや、具体的な成功についてだけでなく、谷間の経験と、自分たちがそれをどのように乗り越えたかも思い出そう。それによって、困難な時期が成長の機会に転じる可能性が際立つだろう。