我々の調査では、他人の興味や期待に自分を合わせることは、非常に一般的な事象であることが確認された。

 調査では就業している成人450人以上を対象に、仕事上の重要なやり取り――たとえば、理想の仕事に就くための面接や自社にとって重要な交渉、投資家に対する新規事業のアイデアのピッチ(売り込み)、クライアントへのプレゼン――をする場面を想像してもらった。その結果、回答者の66%が「ありのままの自分でいるよりも、相手に迎合する方法を使う」と答え、71%は「そうした状況では、相手に合わせるのが最も効果的なアプローチだ」と考えていた。

 しかし、我々が実施した別の調査では、他者に迎合することは、ありのままの自分でいるよりもはるかに効果が少ないことが明らかになった。

 調査では、起業家166人に米国北東部にある私立大学で開催された「高速ピッチ」コンテストに参加してもらった。起業家はそれぞれ、審査員3人の前で自分の事業に関するアイデアをプレゼンする。審査員は経験豊富な現役のエンジェル投資家たちだ。

 そこで売り込まれたアイデアはすべて初期段階のもので、いずれも外部からの資金調達は受けていなかった。最後に、審査員全員が協議のうえ、最終ラウンドに進む10人のセミファイナリストを選んだ。

 起業家がピッチを終えた後、我々はプレゼンに関するいくつかの質問をした。そこで我々が発見したのは、アイデアを売り込む際にありのままの自分でいるほうが、審査員に迎合しようとするよりも、セミファイナリストに選ばれる確率が3倍も高いということだった。

 その理由は何だろうか。

 第1に、我々は他人に合わせるとき、意識的に相手を優先して、自分自身の興味や好みを最小化する。好ましい印象を与えたい相手から、自分が取り組んでいることや本当の自分を懸命に隠そうとすると、認識能力が損なわれたり感情的にも消耗したりするため、パフォーマンスが低下するおそれがある。

 第2に、どれだけ調べたところで相手の好みや期待が確実に把握できるはずはなく、不安が高まり、「見せかけだけだ」という印象を与えることになってしまい、また自分自身もそう感じてしまう。これらはすべて、失敗につながる。