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なぜあるカップルはうまくいき、またあるカップルは失敗し、そして多くのカップルが疲弊するのか。互いの夢を応援し合っていた2人がなぜ、醜い権力闘争を繰り広げるようになってしまうのか。カップルがどちらも仕事を持ち、それぞれのキャリアを大切にしたいと考えていても、両者の均衡が徐々に崩れた結果、自分だけが犠牲を強いられているという感覚に陥ることはよくある。どうすれば、その状況を避けることができるのか。


 フランスに住んで初めて迎えたバレンタインデー、祝うべきことはたくさんあった。ジャンピエロと私は仕事が見つかり、博士号も授与されたところだった。しかも、私たちは婚約したばかりだった。

 ところが、その日の2人の雰囲気は、幸せいっぱいとは言いがたかった。駅の駐車場の隅にある小さな中華料理店で、客は私たちだけだった。ランチタイムには活気にあふれていても、2月14日にカップルがディナーを楽しむのに似つかわしいレストランではなかった。

 2人のどちらかが予約をしていたら、ここは選ばなかっただろう。だが、私は仕事が忙しかったので、彼が予約してくれると思い込んでいた。彼のほうもそうだった。ビニール製のテーブルクロスの上に、しんなりした春巻きを置いた給仕係は、2人の間に漂う緊張感に気づいたに違いない。

 わずか1年ほど前の忘れがたいディナーとは、雲泥の差だった。私たちは数週間前に付き合い始めたところで、ジャンピエロはミラノのお気に入りのピザ屋に私を連れていってくれた。店は盛況だった。イタリアでは人前でいちゃつくのはマナー違反と知りながら、ピザを食べ終えてデザートを待つ間に、私は彼の膝の上に座った。

「えっ、何?」と彼はびっくりしたように言った。

「サバンナで学んだことよ」と、私はにっこりして答えた。ちょうど、ウガンダの動物保護区で過ごした数ヵ月におよぶ研究生活について話をしたところだった。何を研究したのかと彼が尋ねた。「性選択について」と、よくぞ聞いてくれましたとばかりに私は答えた。

「それで、何を学んだんだい?」。私の話に乗ってきてくれるところや、私の仕事について質問してくれるところが、彼の好きなところだった。このとき、彼はその両方をしていた。

「女子は、接近することで選択するの。それが彼女たちの力なのよ」と私は答えた。

 1年後、私たちは蛍光灯の下で、冷めた春巻きを無言でつついていた。私たちが落胆していたのは、場所のせいでも料理のせいでもなく、新しい恋がもたらすはずの力が、静かな日常の権力闘争へと変化していたせいだった。

 私たちは互いに、相手がディナーを計画してくれることを待ち、自分は仕事に集中することを選んだ。付き合い始めた当初から、私たちの間では、時には愛よりキャリアの夢が優先されるだろうことはわかっていたし、互いにそれを望んでもいた。私たちは互いを愛し、互いの仕事を愛していた。だが、現実のバランスは、かつて想像していたものとは違っていた。