広告の本質は「知らない人に知らせる」こと

神内一郎氏 
株式会社LIVE BOARD代表取締役社長。一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム 理事も兼任している

神内 こうした流れの一方で、いま一度回帰しなければいけないと感じる部分もあります。それは、「知らない人に知らせる」という広告の本質です。「興味を抱いている人に、いかにモノを買ってもらうか」ということだけを追求するのではなく、興味のない層にも情報を届ける。例えば、車に全く興味がなかった人に対して、広告を見たことで「車に乗りたい」という気持ちにさせる。

 本来広告の効果はそこにあるはずなのですが、その結果を証明することが難しいため、なかなかそちらに予算を分配することができないのが現状です。ただ、広告のパワーは、そちらにシフトすべきではないかと思っています。

中村 そのためにも効果的なメディアの使い方が求められます。テレビはプッシュ型の屋内メディアで、サイネージはプッシュ型の屋外メディア。PCはプル型の屋内メディアで、スマートフォンはプル型の屋外メディア。それらの組み合わせが可能になりました。これは、「どこにいてもプッシュ型とプル型の両方を持てるようになった」ということを意味します。今はようやく全体のメディアが揃ったというところで、これからの課題は「それらをどのように使いこなすか」だと言えるでしょう。

デジタルOOHは、情報を知らせつつ効果も測れる広告メディア

神内 最近ではデジタルOOHにおいても、その広告を見ている人が何人くらいいて、それはどんな人たちなのかといった属性が分かるようになってきました。例えば、年齢や性別、スマートフォンに音楽アプリを入れている人であれば「音楽に関心がある」など、その人の傾向などのデータを計測できます。

 その商圏を訪れる人がどこに住み、どの交通手段を利用するのかなど、人の流れが分かるようになる。こうしたデータは、マーケティングにおいて非常に強いツールとなります。

 また、ロケーションデータからはターゲットを定義することもできます。例えば、月に数回羽田空港の国際ターミナルに足を運ぶ人であれば、「よく海外出張に行くビジネスマン、決定権者」などと定義でき、その人が普段どの辺りで生活しているのかといったターゲットの生活導線においてメッセージを届けることができます。

――それは、今までの4マス広告にはできなかったことですね。

神内 冒頭からの課題とつながるのですが、今まではさまざまな場所に設置されている広告に対して、誰がどのタイミングで見たのかということを計測して得られるリーチや、フリークエンシーなど数値化できる指標がありませんでした。だから、屋外広告や交通広告といったOOH広告を販売する時というのは、経験と勘と真心に頼っていた。これまでは「渋谷は若者が多い」というような感覚値に頼らざるを得なかったのです。しかし、人流データを解析することによって「渋谷でも朝の通勤時にはビジネスマンが非常に多く見ている」といったことが分かるようになるのです。