女性たちが声を上げられない理由

 今日の社会では、非常に強力なジェンダーバイアスやミソジニー(女性蔑視、女性嫌悪)がいまだに根を張っている。近年はいくらか状況が改善したが、若い女性が生理について語りづらいと感じる社会で、更年期の女性が自分たちの症状について語りにくいのは意外でない。

 もっとも問題の原因は、そのような社会の空気だけではない。本稿の執筆者の一人(ライツ)がジョン・ヒギンズと共同で行った研究によると、女性が職場で更年期について語りにくいことには、もっと具体的な理由もあるらしい。

 組織に雇われて働く5000人以上の女性を調査したところ、声を上げることを躊躇させる要因の中で最も多いのは、悪い印象を持たれるのではないかという不安だった。上司が男性、とりわけ若い男性だと、このような不安を抱く女性がとりわけ多い。

 そうした不安は、根拠のないものではない。更年期を理由に嘲笑されたり、ハラスメントを受けたり、偏見を持たれたりした経験があると語る女性もいる更年期の症状について語れば、仕事の成果が物足りないと思われて昇進を見送られたり、リストラの際に解雇対象に選ばれたりするのではないかと恐れるのも無理はない。

あなたができること

 このタブーを変えるためには、私たち誰もが――とりわけ企業のリーダーが――3つのことをすべきだ。知識を持つこと、耳を傾けること、そして職場の仕組みを変えるための変化を推し進めることである。

 ●知識を持つ

 女性の部下を持つマネジャーは、チームと部下を理解することの一環として、更年期について学ぶ必要があると考えるべきだ。あなたは更年期について何を知っているだろうか。それが女性の部下や同僚たちに及ぼす影響を理解しているだろうか。

「ほとんど知らない」とか、「母/妻/友人が経験していた」という程度の認識しかない人は、勉強すべきだ。最近は有益な資料がたくさんある。マネジャーの職にある人は、たとえばCIPDのウェブサイトが参考になるだろう。女性の部下や同僚が更年期を話題にしたときに、誤解や知識不足でうんざりさせず、支援できるようにしておこう。

 ●耳を傾ける

 ライツの長年の調査によれば、マネジャーはたいてい、部下が声を上げることにどれほど勇気がいるか気づいていない。実際以上に部下が自分に率直に話してくれていると思っていて、自分の聞く力を過大評価しているマネジャーが多い

 この落とし穴に気をつけるべきだ。客観的に考えてみよう。あなたに話し掛けることを怖いと感じている部下はいないだろうか。女性の部下があなたに更年期のことを話そうとするとき、どのような不安をいだくだろうか。どうすれば、そうしたプライベートな問題を話しやすい上司になれるかも考えよう。

 また、部下が更年期について話したときの自分の反応にも気を配るべきだ。これまで、そのような場面で居心地悪そうに笑い声を上げたり、ぼそぼそとした声で「うーん。難しい問題だね。医者に相談したほうがよいのでは」と言ったり、唐突に話題を変えたりしていた人は、考え直したほうがよい。

 しっかり話を聞いて、親身になって問いを発しよう。どのような点が辛いのか、その辛さをやわらげるために、あなたや会社ができることはないかと尋ねればよい。

 ●変化を推し進める

 社員の妊娠にどう対処するべきかという指針が示されることは珍しくなくなったが、更年期の社員への対処法に関する指針は、いまだにほとんど存在しない。この状況を変えるためには、どうすればよいのか。女性は、職場で主体的に行動を起こし、会社の方針や研修制度、コミュニケーションに影響を及ぼせる人たちと話し合おう。

 恥ずかしいという気持ちに負けて沈黙し続ければ、これまでのタブーをさらに強化することになる。英国の中央官庁には更年期の職員を支援するネットワークが形づくられていて、すでに多くの成果を上げている。マネジャー向けの手引き書も作成された。マネジャーはそれを参考にして、更年期をタブーとせず、その症状が理解される職場環境を段階的に築くことができる。