●好奇心が極めて旺盛である

 私の知る限り、相手を質問攻めにすることにかけて、ジャックの右に出る者はいない。しかも彼の場合、自身の知性や重要性をひけらかそうというのではなく、最大限の情報を吸収するのが目的だった。

 かつて私は妻のマリアとともに、アルゼンチンを訪れたジャックのために自宅で夕食会を開いた。招待客についての希望を訊くと、「要人は招かなくていい。あなたたちの友人に会い、人柄や暮らしについて知りたいのだ」という返事だった。

 そこで8人の友人を招いたのだが、夕食会が始まると彼らはしだいに、いら立ちを募らせていった。『フォーチュン』誌が「20世紀最高の経営者」と称えたジャック・ウェルチとの会食とあって、ぜひ学びを得ようと期待していたのに、逆に次々と質問を浴びる羽目になったのだ。

 夜も更けた頃、ジャックはアルゼンチンについて知ろうとし、いつものように押しの強い、挑発的な姿勢で皆に問いかけた。「なぜこのような狂乱的なインフレになったのですか。予測、計画、さらに投資判断は、どうすればできるのでしょう。政府が腐敗しているというのに、実業界がそれに立ち向かう度胸を持たないとは、いったいどういうことですか?」(※一部の表現を和らげてある)。

 後日、出席していた友人の一人から、ようやく腑に落ちたという知らせがあった。「クラウディオ、とても大きな教訓になった。ジャック・ウェルチは、あの飽くなき好奇心を育むことによって、20世紀最高のCEOにまでなったのだ!」

 ジャックがGEの舵取りをしていたのは20年も前ではあるが、彼がみなぎらせていた旺盛な探求心は、環境変化が激しさを増す今日の経営者にとって、いっそう重要なものである。

 拙著論文「人材は潜在能力で見極める」で紹介した調査からは、高い潜在能力を持つ人材の最も重要な特徴は、好奇心であると判明した。

 ボリス・グロイスバーグとトリシア・グレッグは、テクノロジー業界の5人の卓越したリーダー(アマゾン・ドットコムのジェフ・ベゾス、グーグルのラリー・ペイジとサーゲイ・ブリン、マイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルの故スティーブ・ジョブズ)について調べたうえで、時代の最先端を走り続けるには好奇心が重要であると述べ、「CEOはスキルを錆び付かせるわけにいかない。(中略)知識に貪欲でなくてはならないのだ」と結論づけている。ジャックはこの点で、他者の追随を許さなかった。

 GEの元CEOである私の友人は、完璧なリーダーではなかった。しかし、その好奇心、率直さ、そして適切な人事判断を重視する姿勢により、いまなおロールモデルであり続けている。これらは誰もが伸ばすべき、優れたリーダーの3つの特徴である。


HBR.org原文:Jack Welch's Approach to Leadership, March 03, 2020.


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