●優れた人事判断を下す

 ピーター・ドラッカーは、人事判断を扱った古典的なHBR論文に、「エグゼクティブは、人材マネジメントと人事関連の意思決定に最も多くの時間を費やしており、それがあるべき姿である。これほど影響が長引く判断、あるいは元の状態に戻すのが難しい判断は他にない」と記している。

 ジャックもまた、本心からそう考えていた。私は30年に及ぶエグゼクティブサーチ・コンサルタント時代に、2万人を超えるリーダーにインタビューを行った。しかし、優れた人事判断を下そうと心に誓い、実践することにかけて、ジャックの上を行く経営実務家にはただの一人もお目にかからなかった。

 私が初の著書を執筆していた当時、ジャックは優れた人材を採用することは「途轍もなく難しい」が、伸ばすべき重要なスキルであると力説していた。若い頃は的中率が50%にすぎなかったが、30年後にCEOになったときには5回のうち4回は冴えわたった判断ができるようになっていた、と自負していた。

 GE時代のジャックは、適材適所の実現と部下の成功の後押しに、おそらく半分以上の時間を費やしていた。グローバル企業のCEOの大半が部下任せにするような採用判断にも、みずから関わっていたものである。

 最も有能ないし将来を嘱望される人材を、その時点で最大の事業分野に投入するという、ありがちな失敗は避けた。現地での事業規模がいまだ小さかった当時でさえ、インドや中国に有望株を躊躇せずに送り込んだ。成果の上がらない人材や職務への適性が乏しい人材に、いつ、どのように引導を渡すべきかも心得ていた。

 ジェフ・イメルトを後継者に指名したことは、当然ながら批判の的になっている。イメルトの指揮下でGEの時価総額は著しく減少した。「イメルトとGEはいずれも、2000年代の危機や混乱を乗り越える備えができていなかった」という意見には私も同意する。残念ながら後継CEOの人選は、ジャックの人事判断の20%を占める失敗例として記憶されるだろう。

 ジャックはGEを去った後も、投資家、取締役会メンバー、教育者、リーダーシップ・コンサルタントとしての立場から、採用や解雇は慎重に行い、マネジャーについては当人が下す人事判断を基に業績評価や値踏みをすべきだと説いていた。採用や昇進の判断に携わる者はみな、その成否、すなわち「打率」で評価されるべきだとさえ提言していた。

 ジャックによるとこれは、採用という極めて重要なスキルの見極めに役立つだけではない。新人の手助けや稚拙な人事の後始末を、上司達に促すことにつながるというのである。