●入社時のオリエンテーション

 若い人々はたいてい、社会人になると何が待ち受けているかをほとんど知らない。かつて直面したことがないであろうプレッシャーの待ち構える世界へ、若い従業員がスムーズに入っていけるように支援することが大切だ。

 健康・美容・薬局を事業とする米国企業のブーツ(アクセンチュアのクライアントでもある)は、中等教育機関や大学に定期的に赴き、将来の社員候補たちが職場をよりよく理解して備えることができるよう、ワークショップを開催したり、講演を開いたりしている。また、若手の従業員をこれらのイベントのリーダーとして活用し、メッセージを共感しやすいものにしている。さらにブーツでは、新規採用者がスキルを形成し、自信をつけ、新しい責務に適応しやすくなるよう、グループディスカッションやワークショップを行っている。

 キャリアの初期にある人がチューター役となり、新規採用者をサポートする訓練を受けている。チューターにもサポートがあり、何か懸念があれば、メンタルヘルスの問題の特別な訓練を受けた社員に相談できる。

 ●研修

 無事に会社になじんだら、次は仕事のストレスや試練に対処する方法を身につける支援が必要である。ここで肝心なのは、ともに解決策を考え出すことだ。

 国際法律事務所アレン・アンド・オーヴェリーには、たくさんの研修生(大半は2年契約)がいる。若手スタッフの協力とリーダーシップによって、シニアマネジャーは、弁護士が人間的な生活を送ることに焦点を当てたプログラムをつくり出した。新人弁護士が高度の緊張を強いられる環境で、健全なワーク・ライフ・バランスを保てるよう、「実践的なレジリエンスのスキルとアドバイス」を提供するプログラムである。

 そこには、個人の時間と仕事の時間の境界をどのようにして設定して守るかも含まれている。「実際に体験した」人々が編み出したものなので、メッセージに説得力がある。

 ここから生まれた最近の試験的イニシアチブの一つとして、仕事が入らないよう「ブロックできる夜」がある。研修生は自分にとって大切な夜を周知することで、スケジュールをコントロールしやすくなる。また研修生は、自分の課題の重要な懸案事項を共有するニュースレターを、隔週で発行している。

 ●上級リーダー

 自分が直面した困難をオープンに共有しよう。進んで弱さを見せるといい。リーダーが率直に語ることで、悩み苦しんでいる若い従業員は「自分だけではない」と気づかされ、自分の体験を語るための言葉も提供されることになる。

 2019年11月、英国最大のメンタルヘルス関連の会議「ディス・キャン・ハプン(This Can Happen)」で、ロンドンのウェルスマネジメント会社キルターのCEO、ポール・フィーニーがスピーチをした。

 彼にとって解決のカギは、「自分についてオープンになる」ことだった。「業界ではよく『あなた自身に問題があると責めているわけじゃない』と言いますが、あなた自身が問題を抱えているときは、それを認めるべきなのです。大丈夫でないときもあるのだと、知るべきです。最もよいのは、自分のことをオープンに語ることです」

 英国の2019年のメンタルヘルス・アウェアネス週間の際、事業保険会社シンプリー・ビジネスは、社内用の体験共有サイトを開設した。最初に対話のはずみをつけるため、上級管理職の多くが、自分自身のメンタルヘルスの悩みについて投稿した。その週のうちにスレッドはどんどん長くなり、それまでこうした問題をけっしてオープンに語ってこなかった、多くの従業員が参加した。

 ナディア・フセインやポール・フィーニーのような著名人が自分のメンタルヘルスの問題について語ると、人はよく(私も含めて)「勇気がある」と言う。現時点ではその通りだが、そこで終わらせてはいけない。

 この話題にまつわる偏見を減らし、この話題を日陰の世界からメインストリームへと持ちこめば、さほど勇気を奮い起こさなくても誰もが自分の体験を話せるようになっていく。そうなれば、職場でも職場の外でも、より幸福に、自信に満ち、生産的になれるだろう。


HBR.org原文:Young Workers Need Companies to Prioritize Mental Health, January 29, 2020.


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