●休暇と支払いを検討する

 従業員に病気または障害が生じた場合、事業者は休暇を与える法的義務について分析するとともに、現在の状況に合わせて自社のポリシーを改正する必要があるかどうかを検討すべきだ。

 米国では、家族医療休暇法(FMLA)や米国障害者法(ADA)、そして州労働者の補償法、ならびに契約やポリシーがあれば、その文言が適用される。保険でカバーされない内容も把握する必要がある。たとえば多くの旅行保険は、パンデミック(世界的な大流行)をカバーしていない。

 この分析に基づき、企業は、どのような場合なら、給付や保護を拡大してもよいかを検討し、休暇中の従業員の所得をどのくらい補償するか評価すべきである。場合によっては、病気休暇を使い切った従業員のために特別な給付を検討するなど、病気のために自宅待機しなければならなくなった従業員をサポートする方法もあるだろう。

 目先の法的義務だけでなく、ビジネスへの幅広い影響や法的影響を視野に入れることが重要だ。たとえば、感染症が発生している地域に個人旅行をした従業員がいる場合、事業者はその出社停止期間中は補償をする法的責任はないかもしれない。しかしそうすると、その従業員は時期尚早に職場復帰しようとして、他人の感染リスクを高めることになる。それは事業者の事業継続を危うくし、顧客など第三者から法的責任を問われる可能性が生じるとともに、感染拡大の原因になりかねない。

 ●ストレスと不安をやわらげる

 新型コロナウイルス感染に関連するストレスと不安も、法的な懸念材料になる可能性がある。

 これに関する法的基準は、各国・州により異なる。たとえば英国では、事業者には仕事によるストレス関連の体調不良リスクを評価する義務があり、リスクを抑える合理的な措置を取らなければならない。つまり、事業者にとって不当な負担とならない限り、従業員の心理的負担を緩和するために、必要最低限以上の措置を取る必要がある。

 たとえば、新型コロナウイルスに感染することが怖くて出社を拒否する従業員がいる場合、事業者は、たとえ公的に推奨される予防措置をすべて取っていたとしても、その人物の雇用契約を終了するのではなく、自宅待機やリモートワークを認める柔軟性を示す必要があるかもしれない。このような措置は、事業者が英国で不当解雇の訴えを起こされるリスクを回避する助けになる。

 潔癖症などの心の病気は、米国障害者法(ADA)などの法律で保護される障害の一つであり、事業者は合理的な対処義務に基づき、通常のアプローチを変更する必要があるかもしれないことにも留意が必要だ。

 ●プライバシーの保護

 従業員が感染した場合、または感染リスクが極めて高い状態にある場合、会社にどのような健康情報を開示する義務があるかを、事業者が理解しておくことも重要だ。従業員が必要不可欠な業務を果たせない事情や、職場での接触を通じて同僚または第三者の感染リスクを高める可能性がある場合も同様である。こうした個人情報に関する法的義務を理解しておかないと、のちにプライバシー侵害の訴えを起こされるリスクがある。

 幸い、どんなに厳格な個人情報保護法も、公衆衛生のために、事業者が従業員の個人健康情報を当局に開示することを認めている。ただし、こうした情報の取り扱いに際しては、会社の個人情報保護規則に準じる必要がある。また、この情報がEU(欧州連合)から米国に送付される場合は、GDPR(EU一般データ保護規則)に違反することがないよう注意が必要だ。

 ●最悪のシナリオを想定した計画を

 不測事態の備えた計画には、たとえば、主な意思決定者の暫定的な交代計画や、一時帰休やレイオフの法的要件に関する事前の理解や準備も含まれるだろう。

 多くの国や州は、レイオフが一定の規模を超える場合は、緊急措置措定としてではなく、正式な手順や通知義務を果たすことを義務づけている。こうしたルールを守らないと、事業者は大きなペナルティを科されたり、場合によっては、経営陣が個人的な責任を問われたりする恐れもある。

 コンプライアンスを維持する計画を事前に立てておくことが、組織のレジリエンスを確保するうえで重要な位置を占めるのだ。


HBR.org原文:What Are Companies' Legal Obligations Around Coronavirus? March 04, 2020.


■こちらの記事もおすすめします
新型コロナウイルス対策で企業が自問すべき8つの問い
新型コロナウイルスの危機に企業はどう対処すべきか
企業がパンデミックを乗り切るには何が必要なのか