(2)従業員や訪問者の職場立ち入りを禁じるべきは、どんな場合だろうか?

 前述したように、従業員はコロナウイルス感染の症状が現れたら、自宅にとどまるか帰宅すべきだ。しかし献身的な従業員は往々にして、病欠を取りたがらず無理して出社し、他者を感染させるリスクを生む。

 今回の感染拡大が突きつける脅威を踏まえれば、マネジャーは新型コロナウイルス感染症の症状が現れた従業員を帰宅させることを躊躇してはならない。

 あわせて、新型コロナウイルス感染症の兆候があったり、罹患の可能性が高かったりする従業員や訪問者については、他の従業員から隔離し、職場退避と医師の診断の手配を助けよう。その間、人々に感染させる機会を最低限に抑える必要がある。たとえば公共の場所・施設や交通機関を避け、マスクをしていない状態であれば、なるべく他者に2メートル以上近づかないことだ。

 自社の地域で新型コロナウイルス感染症が広がってしまった場合は、携帯型の温度検知器で従業員と訪問者の体温をチェックし、38度を超えている人については立ち入り禁止を検討するとよい。

 ただし体温は、リスクを見極めるうえで特別に正確な方法というわけではない。コロナウイルス罹患者は伝染を起こす危険があるが、人によっては高熱が出ない。そしてコロナウイルスとは無関係な理由で高熱の人もいる。したがって、体温の上昇と、呼吸器系の症状という両方を見ることが、感染の可能性を見極める最もよい目安となる。

 保健機関の推奨では、コロナウイルスに感染している可能性が「中程度」または「高度」の従業員や訪問者については、職場への立ち入りを14日間禁じるべきとしている。通常これが該当するのは、感染が確認されている相手と濃厚接触した人、または感染リスクが高い地域から来た人だ(詳細はCDCのGuidance for Risk Assessmentを参照)。

 我々の調査対象では、北米の雇用主の43%が、中国に最近入国した従業員や訪問者について、帰国後14日間自社への立ち入りを禁止している。14日後に症状が現れていなければ、来社や出勤の再開が認められる。

(3)出社禁止や職場閉鎖を実施した場合、雇用主は諸手当の方針を見直すべきだろうか?

 自身が罹患したため、または他者を看護しなければならないために業務ができない、という従業員が増えることが予想される。したがって企業はいま、有給休暇と有給病気休暇に関する方針を見直すべきである。有給病気休暇を取ってもペナルティが課されず経済的にも困らない、という安心感を従業員に与えるような方針内容を定めることは、罹患の自己申告を促して感染の可能性を減らす重要な手段となる。

 我々の調査では、雇用主の約40%が、職場閉鎖や自宅待機が生じた場合の諸手当の方針を明確化した、またはする予定と回答している。

 アジア以外の地域では、感染拡大によって職場を閉鎖した企業はまだほとんどないが、調査対象となった中国企業の約半数は、少なくとも一時的な閉鎖を実施していた。感染の拡大状況がこのまま続けば、こうした措置はアジア以外でも一般的になることが見込まれる。

 ほとんどの企業の方針では、新型コロナウイルス感染症は他の病気と同様に扱われ、有給病気休暇や短期の身体障害保険が認められるだろう。しかし、出社禁止は身体障害保険でカバーされないかもしれず、欠勤が長引けば、利用可能な病気休暇日数を超える可能性もある。

 我々の調査では、中国企業の90%以上が、自宅待機の期間でも給与を全額支給し、諸手当もそのまま残していた。企業がいまやるべきは、待遇面について明確な方針を発表し、その内容に関して従業員とコミュニケーションを取ることだ。ほとんどの企業は、金銭的に実現可能な範囲で従業員を守りたいことだろう。