(9)次の危機にいまから備えておく

 新型コロナウイルス禍は1回限りの試練ではない。今回の流行にはさらにいくつかの局面がありうること、将来的に別の疫病が生じ得ることを、想定しておくべきである。

 苛酷な危機への組織の対応の巧拙を調べたところ、対応が最終的に奏功するかどうかを大きく左右するのは、準備と予防的措置であると判明した。次の危機(あるいは目下の危機の次なる局面)にいまから備えておけば、危機が現実になってから場当たり的に対応するよりも、はるかに有効だと考えられる。

(10)机上で備えるだけでは不十分である

 多くの企業はさまざまなシナリオを検討し、予想外の状況に机上で備えようとする。とはいえシナリオは、その時々の最も重大なリスクに照らして更新ないし修正しなくてはならない。従来とは異なる地域における新たな感染の広がりを受けて、ここ数日間でさえリスクは変化しているのだ。

 ただし、机上の準備だけでは足りない。理解は深まるかもしれないが、実践力は習熟の域に達しないのである。したがって、シナリオに沿ってシミュレーション演習を行い、緊迫した状況下での行動から教訓を引き出すのが望ましい。作戦指令室を設けて少人数の専任チームを配置し、判断と実行の権限を与えれば、複雑な組織の壁に阻まれずに済むだろう。

(11)危機から得た学びを振り返る

 危機が沈静化したら、ほっと一息ついて平常に戻るのではなく、貴重な学びの機会を無駄にしない努力をすべきである。危機の進行中でさえ、後から見直して教訓を引き出すために、対応と影響を記録に残すのが望ましい。

 状況が急展開している時には、難しい決断ができない、合意形成を過度に重んじるといった、既存組織の弱点が露わになる。これらは改善機会に結びつく。

 たとえば、この点に関して最も有益な包括的学習システムの一つに、航空機の安全確保がある。小さな過失から人命につながる悲劇的な事故にいたるまで、何か問題が生じるつど、承認済みのルールに従って鑑識のような緻密さで根本原因を調べ上げ、拘束力のある勧告を行う。過去の悲劇を糧に学習と適応を繰り返してきたのだから、航空機が極めて安全な移動手段であるのは当然だと言える。

(12)世の中の変化に備える

 新型コロナウイルス危機が、企業や社会に重大な変化を及ぼすことを想定しておくべきである。オンライン・ショッピング、オンライン教育、公衆衛生への投資などの分野にとってはおそらく、追い風になるだろう。サプライチェーンの変更を促し、一握りの巨大工場に依存する状態からの脱却を後押しする可能性も高い。

 差し迫った状況を乗り越えたなら、各企業はこの危機によって何が変わるか、自社は何を学んだかを考察し、今後に向けた計画に反映できるようにすべきである。


HBR.org原文:Lead Your Business Through the Coronavirus Crisis, February 27, 2020.


■こちらの記事もおすすめします
新型コロナウイルスはグローバル経済に何をもたらすか
新型コロナウイルス対策で企業が自問すべき8つの問い
企業がパンデミックを乗り切るには何が必要なのか
DHBR2019年8月号「人類史上、最も危険なウイルスに挑む」