(1)新しい情報を日々収集する

 怒涛のように事態が展開するため、状況は日ごとに変わる。わずか数日前、感染症はほぼ中国国内に限定され、その広がりは制御されつつあるように見えた。ところが直近では、中国以外の多くの地域において感染が急拡大しており、封じ込めよりもむしろ緩和が必要になりそうな新局面を迎えたことがうかがわれる。

 筆者らのチームは当初、72時間ごとに最新情報を交換する方針を掲げたが、これを日次に切り換えて、情報を更新するほか、全般的な状況認識を見直すようにした。

(2)報道や流言に用心する

 報道機関はともすれば全体像よりも新たな事象に焦点を当て、場合によっては厳然たる事実、曖昧な状況、憶測を区別せずに扱う。危機の現状をめぐる組織の認識は、前日の報道をもとに決まる可能性が高い。

 最新の技術にせよ、新たな危機にせよ、目まぐるしく変化する状況に直面すると、人間は十中八九、最初はかすかな兆候を見逃し、やがて緊急事態に過剰に反応する。その後にようやく、慎重な評価に基づいた見方をするようになるのだ。

 最新のニュースを頭に入れたら、行動を起こす前に、批判的な視点で情報源について考えてみるとよい。

(3)情報を収集しただけで、状況を十分に把握したと思い込んではならない

 今日のようなインターネット社会では、従業員が多くの情報源にみずからアクセスすることができる。リーダー層が「社外からこれだけ大量の情報や解説が出ているのだから、そのうえさらに自分たちで何かする必要はない」と結論づけたとしても、不合理とはいえないかもしれない。

 しかし筆者らの知見によれば、実情とその意味合いを定期的に取りまとめて社内に広く周知することは、極めて有意義である。こうすると、事実をめぐって議論を戦わせたり、さらに悪くすると、いくつもの異なる前提を置いたりして時間を浪費することを避けられるのだ。

(4)専門家や予測の活用には慎重になるべきである

 刻々と変化する込み入った情報を解釈するには、疫学、ウイルス学、公衆衛生、物流などの専門知識が不可欠である。ただし、最適な封じ込め策や経済への影響といった重要問題に関して、専門家の見解はどう見ても一様ではないため、複数の関係筋に見解を求めるのが望ましい。

 感染症は予測不可能なうえにそれぞれ性質が異なり、今回の新型コロナウイルスの重要な特性については、いまだ学習途上である。たとえ専門家の見解を仰ぐとしても、何が起きているのか、何が有効であるかを探り当てるには、経験を土台とした実証的なアプローチが求められる。

(5)状況認識をたえず問い直す

 状況に関する大局観と対処プランは、ひとたび資料に記されると、それ自体が惰性につながりかねない。中国の諺にあるように、偉大なリーダーは朝令暮改を実践すべきである。

 ところが、大組織がそのように機動的に対処する例は稀である。マネジャーはともすれば、確信を得るまでプランを公表しようとせず、いったん公表した後は「優柔不断である」「誤った情報に基づいた判断だ」「組織を混乱させている」などという印象を持たれるのを恐れて、変更に二の足を踏む。

 刻々と変化する状況を把握して順応するには、「最新の見通し」と題した時刻印入りの鮮度の高い資料が不可欠である。

(6)官僚体質を警戒する

 注目度が高く物議を醸しがちな繊細な問題については、通常は経営上層部のほか、総務、法務、リスク管理など多数の職能部門が意見を寄せる。その各々がコミュニケーション方法の提案を含むため、結果として紋切型ないし過度に保守的な見解を出したり、時間のかかる煩雑なプロセスを設けたりする結果につながる。

 重要なのは、少数精鋭チームを設けて十分な裁量を与え、速やかな戦術決定を可能にすることである。日ごとに重要な新情報が明らかになる状況では、コミュニケーションを制約しすぎると弊害を生みかねない。社内手続きの進行度合いを黙認するのではなく、外部環境の変化に見合ったペースを目指すとよい。

 最新情報をデジタル文書にまとめると、何種類もの文書を作成、承認するという無駄な手順を省き、迅速化に寄与するだろう。必要に応じて簡単に更新や取消ができるため、リスクの低減にもつながる。また、事実、仮説、憶測を区別すると、細かいニュアンスを洩らさずに全体像を伝えるのに役立つだろう。