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プレゼンが得意ではないという人は多いが、その不安は万全の準備をすることで解消できる。ただし、プレゼン後の質疑応答で何を聞かれるかはその瞬間までわからず、完璧な対策など不可能だ。そのためプレゼン慣れしている人でも、質疑応答への苦手意識をなかなか拭えずにいる。本稿では、難しい質問に直面したとき、脅威をやわらげて、主導権を取り戻す4つのステップを紹介する


 人前で話すのが得意ではない、という人も大丈夫。仲間はたくさんいる。

 多くの人が不安に思っている証拠に、心理学には、スピーチを用いて実験的に不快なストレスを誘導する手法がある。これはトリーア社会ストレステスト(TSST)と呼ばれるもので、被験者は無表情の人々の前でスピーチと計算問題を行う。すると、心拍が速くなる、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾール値が上昇する、皮膚コンダクタンス反応が高まる(つまり、手のひらが汗ばむ)などストレスの徴候が、ほぼ確実に現れる。

 もちろん、プレゼンテーションの準備を万全にすれば、不安をやわらげることもできる。しかし、私のクライアントは大きな会議の準備をする際に、熟練した専門職の人たちさえ、ある共通の不安を訴えることが多い。最近も一人のクライアントが、こんなふうに言った。

「スライドは暗記している。数字も頭に入っているし、紹介するエピソードのくだりも練習した。でも、質疑応答はやりたくない。何を質問されるのかわからないから、うまく答えられないかもしれない。それどころか、間の抜けたことを言ってしまうかもしれない」

 残念ながら、科学的にも、彼らがそう思うのも無理はない。厳しい質問をされて、どう答えればいいか自信が持てないと、その場をコントロールできなくなったように感じがちだ。そうした感覚は、脅威の信号として脳に伝わり、防御のための闘争・逃走反応が強化され、脳の中で複雑な論理的思考に関連する部位の働きが制限される

 このように心的資源(脳が情報を処理する能力)の方向性を変えることは、迫り来る脅威がたとえば火事なら、完璧に機能する。とにかくできるだけ速く、燃えている建物から逃げるだけだ。しかし一方で、このような反応が起きるために、プレッシャーを跳ね返して答えなければならないときに頭が真っ白になる。

 簡単に答えられない質問に直面したとき、より明確かつ創造的に考えるためには、脅威の感覚をやわらげて、その場の主導権を取り戻さなければならない。それを実践する4つのステップを説明しよう。