ジェンダーバイアスを取り除く

 起業家のプレゼンをなくしたくないなら、性別ごとに一定金額の投資資金を割り振るようにするのも合理的な方法だ。そうすれば、ジェンダーバイアスの影響を取り除ける。プレゼンで、女性起業家は、ほかの女性起業家とだけ競い合うことになるからだ。フィーメール・ファウンダーズ・ファンド、ゴールデン・シーズ、ヴーレ・キャピタルなど、多くのベンチャーキャピタルがこのアプローチを採用している。

 ほかには、プレゼン抜きの投資プロセスを設計する方法もある。ソーシャル・キャピタルやクリアーバンクなどのベンチャーキャピタルは、オンラインで申請を受けつけ、具体的な数値指標をもとに投資先企業を選んでいる。ロイヤルVCは最初の選抜をアクセラレーターに委ね、数ヵ月にわたり候補企業を観察して判断を下している。

 私たちの考えでは、現時点で最善のアプローチは、以上に挙げた2つの方法、すなわち男性と女性が競わないようにすることと、プレゼンを廃止することだ。

 だが、遠くない将来、テクノロジーの進歩によりまったく新しい選択肢が生まれる可能性もある。たとえば、デジタルテクノロジーの力を借りて、起業家の性別やルックスがわからないようにできれば、バイアスを完全に取り除けるかもしれない。

 オーケストラの世界では、以前から同様の手法が用いられている。演奏家のオーディションを行うとき、スクリーンの向こう側で演奏させ、審査員に見えないようにすることで、ジェンダーバランスを改善できている

 ここまでの話をまとめると、投資家が起業家のプレゼンに評価を下す際は、ジェンダーバイアスの影響を受けやすい。これは、男性投資家にも女性投資家にも見られる傾向だ。このような状況では、最良の財務成績を残せるスタートアップ企業に投資できているとは言えない。

 私たちの調査から明らかなように、起業家にプレゼンをさせないベンチャーキャピタルは、ベンチャーキャピタル業界の平均に比べて、女性起業家への投資が8~12倍も多い。ジェンダーバランスの改善を目標に掲げていなくても、純粋に財務成績を基準に投資先企業を決めれば、そのような結果になる。

 起業家のプレゼンをなくすことは、ジェンダーの平等の面でも、ベンチャーキャピタルの収益の面でも、好ましい結果を生むのである。


HBR.org原文:How the VC Pitch Process Is Failing Female Entrepreneurs, January 13, 2020.


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