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業務効率化に貢献する優れたアプリは数多く存在するが、自分のニーズを完璧に満たすツールは存在しない。自分の好みやプロジェクトの進め方によってニーズも変わる。そこで筆者は、あなたの要求に合致するシステムを自分で構築することを推奨する。本稿では、開発に着手する前に知っておくべき5つの原則を示す。


 やることリスト(to-do list)を管理したり、プロジェクトマネジメントをしたり、生産性を向上させたりするためのアプリに、完璧なものはなど存在しない――。

 アプリの伝道師とでも呼ぶべき私のような人間がこんなことを言うと、意外に感じるかもしれない。私はこの15年間、タスク管理のための「トゥードゥーイスト(Todoist)」や「ワンダーリスト(Wunderlist)」、プロジェクトマネジメントのための「アサナ(Asana)」や「ベースキャンプ(Basecamp)」、そして、そのほかのさまざまな生産性向上のためのアプリの類いを試してきた。時間を有効に活用し、同僚やチームのメンバーとのコラボレーションを促進することが目的だ。

 こうしたタスク管理アプリやカレンダーアプリ、メッセージアプリ、協働型のプランニング・文書作成プログラムをひとまとめにして、私は自分の「生産性システム」と呼んでいる。

 いくつかのアプリは、かなり気に入った。長いこと利用したり、人に勧めたり、同僚に使わせたりしたものもある。しかし、プロジェクトが終わったり、チームが変わったりすると、そのたびに生産性システムも変更するケースがほとんどだ。もっと便利なアプリがないかと、探さずにいられないのだ。

 そうせずにいられないのは、私だけではないらしい。ソフトウェア比較サイト「ゲットアップ(GetApp)」の2019年の調査によると、プロジェクトマネジャーの97%が複数のツールを使用している。本稿執筆時点でテクノロジー購買ガイド「G2」に紹介されていたツールは、タスク管理用のものが272種類プロジェクトマネジメント用のものがなんと777種類にも上る。

 これは、多くのソフトウェア開発者が、自分で新たなプラットフォームを開発する必要性を感じていることの現れなのかもしれない。実際、「ベースキャンプ」「リンドル(Rindle)」「トゥードゥーイスト」は、そのような経緯で開発された。

 現状への強い不満が生まれる一つの理由は、タスク管理方法の好みが人によってまちまちだという点にある。たとえば、あなたは1週間の課題を「ポストイット」のような付箋に記すことを好むかもしれないが、同僚はホワイトボードに書き込むほうが好きかもしれない。

 それに、自分好みのアプリなどを選んだとしても、生産性を高めるためにどのような環境が好ましいかは、プロジェクトや役割によって変わってくる。たとえば、あるプロジェクトではグーグルのソフトウェア一式ですべて事足りたかもしれないが、次のプロジェクトの顧客はグーグルの文書作成ソフト「グーグル・ドキュメント」を使いたがらない可能性もある。また、あなたが手掛ける仕事の中には、業務内容がはっきりしていて、短時間で仕上げなくてはならない課題もあれば、大規模で複雑性が高く、さまざまな要素が複雑に絡み合った課題もあるだろう。

 しかし、最近は新しいソフトウェアが登場して、誰でも自分の好みに合わせて生産性向上のためのシステムをつくれるようになった。プログラミングの専門知識も必要ない。たとえば、「エアテーブル(Airtable)」「ノーション(Notion)」「コーダ(Coda)」といったソフトウェアがある。このようなソフトウェアは、細かい違いはあるが、いずれもシンプルな表計算ソフトや文書作成ソフトの機能を強化し、自分でプログラミングを行わなくてもプログラミングの恩恵に浴せるようにするものだ。

 私はこの半年間、こうしたソフトウェアの一つ(具体的には「コーダ」)を用いて業務のほとんどを行ってきた。その経験を通じて驚かされたのは、この種のソフトウェアを使って自分で生産性向上のためのシステムをつくれば、既存のアプリの類いを用いるよりはるかに効果が大きいということだ。

 これらの新しいソフトウェアを利用している人は多い。「ノーション」のウェブサイト内の「テンプレート・ギャラリー」には、ユーザーが作成した生産性向上に有用なテンプレートがたくさん公開されている。動画制作の具体的な手順を紹介したものもあれば、フリーランスで働く人に役立つツール一式をまとめたものもある。「エアテーブル」のウェブサイト内の「ユニバース」と呼ばれるコーナーにも、顧客や営業先の管理レンタル機材の在庫管理新製品リリースの進行管理など、さまざまな用途でユーザーが作成したテンプレートが公開されている。

「コーダ」のコミュニティにも、プロジェクトマネジメント生産性向上のためのテンプレートがたくさん公開されている。たとえば、アイゼンハワー元米国大統領の方法論を土台にした、やることリストの管理システム、編集チームの作業フロー管理システム、「オムニコドロ」と名づけられた生産性向上のためのテンプレートなどがある。「オムニコドロ」は、生産性向上の方法論「GTD」の手法と「ポモドーロ・テクニック」と呼ばれる手法を組み合わせたものだ。

 こうしたテンプレートの数々を見れば、生産性向上のための仕組みには、さまざまなタイプのものがありうると知ることができるだろう。その中に、そのまま採用したいものが見つかる場合もあるかもしれない。しかし、これらのソフトウェアが最も効果を発揮するのは、自分のニーズに合わせて独自のシステムをつくる場合だ。いま使っているツールに具体的な不満があるときは、とりわけ独自のシステムをつくることのメリットが大きい。

 そこで、独自のシステムをつくりたい人が頭に入れておくべき原則を、いくつか紹介しよう。