まず、感情に関する新しい考え方を身につけることから始めよう。感情は人間にとってマイナスの要素ではない。チャンスを活かし、脅威から身を守るために不可欠なシステムの一部だ。

 たとえば、ミスを犯すと感情が反応して、その体験がより際立って意識されることで、2度と同じことをやるまいと記憶する。また、グループの一員でいられなくなるような発言や行動をしたとき、身体的苦痛を感じるのに似た感情の反応がある。その不快感が、良好な関係を維持する大切さを思い出させてくれる。

 人間にとって、感情は、みずからを取り巻く環境を体験するときの基本的な生物学的反応であり、「家に置いていく」(私は最近、ある経営幹部からそう言われた)ことはできない。感情は回避すべきものではなく、むしろ注意を払い、そこから学ぶべきものなのだ。

 感情が意思決定に関与することを理解できたら、感情の出どころを把握し、そこから学ぶことがマネジャーの務めである。

 感情は身体の痛みと同様、症状であって病名ではないことを忘れないでほしい。誰かが感情を爆発させていたら(泣く、叫ぶ、テーブルを叩くなど)、その人は何かで傷ついている可能性が高い。そこで議論されていることが、その人の深い信念には相入れないものだったり、頭が混乱するような新しい情報を提供していたり、その人の能力や人格、自己概念に疑問を抱かせるものなのかもしれない。

 そうしたとき、脳は「自分の世界が破綻されようとしている」というメッセージを送り、警報を鳴らす。その人の苦痛を和らげるには、何を傷つけられているのかを特定する必要がある。

 チームのメンバーが感情的な反応をしたときは、「これは大切なことですね。私はどのようなことを理解する必要があるでしょうか」と言う。この言い回しには、重要な意味がある。「あなたは泣いていますね。どうして泣いているのですか」などと言えば、相手は居心地の悪い思いをするか、面目をつぶされたと感じるだろう。

「これは大切なことですね」も効果的だ。「あなたは動揺していますね。何が問題なのか教えてください」というような、まるで相手の考えていることや感じていることを、わかっているかのような言い方ではない。むしろ、あなたに事態を洞察する余地を与えてくれる。

 余談になるが、会話が感情的になったとき、そのまま続けるのがいいか、いったん中断して後でその話題に戻るのがいいか、という質問を受けることが多い。私がお勧めするのは、できる限りは会話を継続することだ。

 第1に、会話を続けることで、感情は有害なものではなく、生きるうえで自然な要素だという考え方を強化できること。次に、いったん中断した感情的な会話を再開するのは、とても気まずいものだからだ。

 分別を働かせよう。その人が、呼吸が乱れるほど泣いたりわめいたりしているなら、「これは大切なことですね。どういうことなのか、よく理解したいと思います。少し時間を取って、あなたの考えをまとめていただけますか。午後にもう一度集まりましょう」と言う。

 本題に戻る。相手の答えを聞きながら、聞いた内容についてよく考えよう。その人が自分の考えをまとめられるような質問をする。

「これはどう展開すると思っていますか」、あるいは「私たちの配慮が不足しているのはどこでしょうか」と質問してもいい。あなたとの会話で問題の根源がはっきりしたと、相手が明白なサインを出すまでは、相手が言ったことをパラフレーズする。

 それから、具体的な行動に向けた質問に移ろう。「あなたにとって、どのような進め方をするのがいいですか」あるいは「その懸念に対処するために、私たちは何を対応策に盛り込む必要があるでしょうか」と尋ねてみる。対応策について話し始める頃には、相手の感情が収まっていることに気づくだろう。

 だが、もしあなたが相手の提案を採用できる立場にない場合、どうすればよいか。あるいは、良いアイデアでなかったり、理にかなわなかったりしたら、どうすればいいのだろうか。

 そうした場合は、率直に対応しよう。たとえば、重要な問題を提起しているが、実行不可能な改善策を要求しているのなら、「その問題を提起してくれて、ありがとう。ただし、私たちはそれを実行できる立場にありません。でもこれで、リスクをわかったうえで取り組める感じがします」と言う。

 たいていの人は、意見を聞いてもらって理解されたと感じたら、言い分が通るか否かにかかわらず、感情は鎮まる。それでも収まらない場合は、感情的な反応が、その人自身のパフォーマンスやチームの力学、あなたの認識に影響を及ぼしていることを伝えよう。仕事の妨げになるならば、感情もフィードバックの材料とするに値する。

 機会があれば、チーム全体の規範に関する話し合いの一環として、感情の役割を取り上げよう。感情についてのあなたの見解を伝え、チームのメンバーにも見解を述べてもらう。

 チームにおける感情への対処について、あなた自身の基本原則を持つこと。また、相互尊重やチームワークといった既存の組織の価値観に、感情への対処に関する行動指針を加えることを検討してほしい。

 最終的には、あなた自身が感情にどう関わるかが、チームのあり方に最も大きく影響する。感情を表した人を罰してはいけない。そういう人を批判したり、もっと強い感情で反応したり、避けたりしてはいけない。同時に、相手の感情を引き出した人を罰してはいけない。

 徹底的で厳しい質問をした人が、同僚を感情的にしたからと叱責されるのを見かけることが多すぎる。チームにおいて、何を質問して追求してよいか、やってはならないかをめぐって不安や恐怖が生じると、議論や意思決定の質が落ちていく。

 あまりにも無遠慮な質問であれば、あなたが別の言葉で言い換えればいい。あるいは、議論の中で質問や意見を十分に理解する時間を設け、それからチームを理性的な議論に導くこともできる。

 マネジャーとしてのあなたの役割は、ビジネスで直面する最も熾烈な議論を通じて、チームを導くことだ。難しい議題に近づくときに不安や恐怖を感じ取ったら、自分たちが取り組み、解決する価値があることを伝えてチームを励まそう。

 議論が感情的になっても大丈夫だという雰囲気をつくり、最適解にたどりつくまで取り組み続ける。議論をスタートさせる質問を穏やかに投げかけよう。途中で議論が荒れてデコボコ道に入ったら、もっとも良い道へと誘導する。

 修羅場になるのを恐れて、対立を回避するチームがあまりに多い。感情を正しく導く方法をチームに教えて、意思決定を向上させ、信頼とつながりを強くし、誰もが自分は周囲から目を留められて理解されていると感じられるチームを構築しよう。


HBR.org原文:Let Your Team Have That Heated Conversation, December 23, 2019.


■こちらの記事もおすすめします
チームの生産的な対立を常に起こさせる方法
仕事における意見の不一致は、なぜそこまで重要なのか
異論が出ないチームならば一緒に働く意味はない