これは、米国の個人消費の半分以上を担っている、50歳以上のマーケットパワーを反映していない。イプシロンの調査によれば、最もお金――年間5000億ドル超――を使っているのが、1946年から1964年の間に生まれたベビーブーマー世代である。X世代(50歳以上を部分的に含む)は大差で2位、以下ミレニアル世代、サイレント世代、Z世代と続く。

 だが、多くの企業は、50歳以上をほとんど視野に入れていない。マーケティング予算の推定5から10%しか、この層の取り込みに充てられていないのだ。

 50歳以上を起用した広告画像のうち、ITを使用している姿を写した画像は5%にとどまり、それでさえ、若者に機器の使い方を教わっている設定だ。だが実際には、IT企業の成長機会はエルダー世代が握っている。ピュー研究所の最近の調査によれば、「2012年以降、エルダー世代、特にX世代とベビーブーマー世代でITの導入が大幅に進んでいる」。2012年以降のSNS利用は、若年層ではおおむね横ばい状態だが、ベビーブーマー世代以上では10ポイント伸びている。

 米国のエルダー層の購買力と相矛盾する企業の意識の薄さは、かなり以前から、その世界の内側にいる人間として私も目にしていた。私は広告の世界で30年以上、多岐にわたる商品のあらゆる種類の広告キャンペーンに携わってきた。その中で、おそらく唯一、高齢の飼い主に向けたドッグフードの広告を例外として、45歳以上の人が広告のブリーフィングで引用されたり、フォーカスグループに呼ばれたりするのを、一度たりとも見た記憶がない。

 エルダー層への訴求意欲の欠如と、マーケティング部門や広告代理店に蔓延する悪名高き年齢差別とは、密接に関係し合っている。同僚たちを見ても、半世紀の区切りに近づいたところで、それまで順調に築いてきたキャリアが一変している。差別は、あからさまな場合もあれば、さりげなく行われる場合もある。私自身、自分の「プロフィール」が「もはや求められているものと違う」と教えられることがあった。

 企業には、マーケティングキャンペーンの企画に携わる50歳以上の社員がほとんどいないため、これから50歳以上の消費者を狙った販促活動に乗り出す可能性は、いまよりも低い。だが、乗り出さざるえない経済的理由がある。

 ニールセンの調査によれば、「いまから2030年までの間に、18~49歳の人口は12%増加するが、50歳以上は34%増加すると予想されている」。若者世代だけが自社の未来を支えると思っていると失敗する。調査によると、50歳以上の人は、ステレオタイプに反して「自分の考えに凝り固まって」いない。口説けば落とせるのだ。

『ジャーナル・オブ・ビヘイビアル・スタディーズ・イン・ビジネス』に掲載された、カリフォルニア州立大学とサザンコネチカット州立大学の研究者による論文は、現在のエルダー層が「型にはまった50歳のイメージを打ち破ることと、アンチエイジングに夢中」であることを認識すべきだ指摘している。

 そのポテンシャルを活かす企業は、利益を得るだろう。どの業界でも、50歳以上の世代にターゲットを移した最初の企業は、何百万人もの消費者を取り込める可能性がある。エルダー層は、その子どもたちよりも使えるお金を持っているのだ。


HBR.org原文:Don't Underestimate the Market Power of the 50+ Crowd, January 09, 2020.


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