●事実を集める

 解雇がかかった会話では、当然、意見が対立する。たとえばランディは、自分は合理的な進歩を示してきたのだから、雇用継続に値すると考えてミーティングに臨む可能性が高い。だが、私はそうは思っていない。

 この種の会話はしばしば、情報共有ではなく、対立で終わる。私は私の言い分を主張し、相手は相手の言い分を主張する。その繰り返しだ。

 解雇がかかっているような会話で、のっけから自分の結論を伝えないこと。その結論に達する原因となった事実と前提を示そう。データを示し、その結論をもたらしたロジックを説明しよう。健全な会話をしたいなら、事実の収集は不可欠の宿題だ。

 その結果、「ランディは人とプロジェクトを管理する能力がまったくない」と思うなら、それを忍耐強く、正直に、相手が反論できる方法で説明する義務がある。また、彼の反論にオープンな姿勢を示すことも重要だ。

 ●好奇心を持つ

 解雇や処分が関わる会話をするときに最も重要なのは、自信と好奇心をミックスした態度だ。私は自分の地位をよく考え、自分はその地位にふさわしいという自信を持つ必要がある。同時に、私の結論を改善する可能性がある事実や論理に対して、関心を持つ謙虚さが必要だ。

 多くの人は、好奇心は自分の決意を弱めると考えて、好奇心を持つことに抵抗する。だが、実際は正反対だ。好奇心は、あなたの発言に説得力を持たせるのだ。

 ケネディ政権とジョンソン政権で国務長官を務めたディーン・ラスクは、「人を説得する最善の方法は、相手の言葉に耳を傾けることだ」と言った。相手の言葉に真摯に耳を傾けると、相手は自分の話を聞いてもらうと、あなたに抵抗する必要性を感じなくなる。

 私はランディとのミーティングの部屋に足を踏み入れたとき、彼に伝えるべき決断に自信を抱いていたが、異なる決断に導きうる情報にオープンな姿勢を示した。自分の中に、思いやりと決意の両方を感じた。自分の決断のもとになった情報を伝える準備もできていた。私の心は落ち着いていた。

 おかげですべてがうまくいった、と報告できたらいいのだが、ランディは転職先を見つけるのに苦労した。私たちは彼の職探しを頻繁に手伝った。

 解雇という決断を実行するのは辛かったが、ランディはミーティングが始まってから数分で同意してくれた。「この半年間はストレスが大きかった。この仕事は自分に向いていないとわかった」。ミーティングの終わりに、私たちはお互いにハグした。それまでも友達としてずっとやってきたように。

 難しい話をしなければならないとき、何と言おうか心配するのは当然だ。だが重要なのは、まず、その目的と、前提となる事実と、感情を整理することだ。解雇などの処分がかかる会話の60%は、あなたの頭、心、そして気概を正しい方向に向けること、そして40%はそれを正しく表現することで決まるのだから。


HBR.org原文:4 Things to Do Before a Tough Conversation, January 22, 2019.


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