●目的をリセットする

 ストレスにさらされ、びくびくしているときは、目先のことばかり考え、自己中心的な考えをしがちだ。周りの人が自分をどう思っているか、善人だと思われているか、自分は正しいか、勝つか、争いを回避できるか――。

 私は1年半にわたり、ランディとの関係に波風を立てないように必死だった。こうした短期的な視点の悪いところは、問題を先送りしているにすぎないことだ。

 ランディと対峙するのを回避することで、私は彼が仕事を守る能力を傷つけ、顧客にダメージを与え、チームメートをいらいらさせ、その一部が辞めてしまうリスクさえ冒した。だが、ストレスにさらされ、ビクビクしていると、長期的な視点を忘れて、その場逃れをしたくなる。

 ランディが約束を破るたびに、私は「どうやってカバーすればいいんだ」と胸が苦しくなった。だが、本当に考えるべきだったのは、「真の問題はどこにあるのか」だ。

 だから、解雇のような重要な話をするときの準備作業として真っ先にすべきなのは、目的をリセットすることである。これは、「自分は本当は何をしたいのか」というシンプルな問いに、よく考えて答えを出すことで可能になる。

 この問いは4つのレベルに分解すると答えやすい。すなわち、「私のために/他人のために/人間関係のために/そして他のステークホルダーのために」何を求めているか考えるのだ。

 金曜日の朝、これらの問いを深く考えていると、非常に強力なことが起きた。

 自分の本当の望み(思いやりがある倫理的なマネジャーでありたい、ランディが成功できる仕事を見つけるのを助けたい、私がランディと彼の家族のことを気にかけていることをランディにわかってもらいたい、そして彼のチームと顧客にふさわしいサポートを与えたい)を考えていると、自分の意識が集中し、決意が固まり、心が落ち着いてきた。これらの希望を全部つなぐだけで、私の情緒に変化が訪れたのだ。

 ●気持ちを整える

 余計な感情は生産的な会話を妨げる。私たちはしばしば、怒ったり、怖がったり、傷ついたり、身構えたりする。驚くべきことに、こうした感情は、相手の行動ではなく、相手の行動に関する自分の解釈に反応している。

 たとえば、誰かに解雇を言い渡すとき、マネジャーたちはよく、犠牲者のストーリーと悪者のストーリーを自分に言い聞かせる。

 前者は自分を犠牲者と見なすストーリーで、目先の問題に対する罪悪感を取り除いてくれる。「ランディのために、できることはすべてやった。よく我慢したし、たくさんサポートしたし、親切に接した。もう私ができることはない! 彼自身の責任だ!」といった具合だ。犠牲者のストーリーは私たちを、苦境にさいなまれる無実の人と見なす。

 悪者のストーリーは、相手を悪者と見なすもので、こちらが残念な行動を起こさなければならないのは相手が悪いからだとして、自分を正当化する助けになる。このストーリーは、相手を苦しみに値する人間と見なす。「ランディがここの問題を放置しているなんて信じられない。彼は怠け者で、やる気がなく、ほかの誰かがやってくれると思っている。チャンスはいくらでもあったのに、私の明確な助言も気にかけなかった!」というわけだ。

 あなたが自分に言い聞かせているストーリーはどちらか考えて、それが正しいのか自問すること。自分を犠牲者と見なすのをやめて、行動を起こす人間になろう。相手を悪者にするのをやめて、人間として考えよう。そして自問しよう。「『これは私の仕事ではない』と目を背けている役割があるのではないか」「合理的で、理性的で、まともな人間なら、彼に対してどんな対応を取るだろう」と。

 実際に、私がこれらの問いを自分に投げかけてみると、対立を避けるために、ランディに対するフィードバックを最小限に抑えることで、かえってランディの問題を助長していたことがわかってきた。また、ランディは自分を変えようと努力したが、そのポジションは彼の強みを活かせなかったことがわかってきた。適材適所ではなかったのだ。私はランディを突き放して憤慨するのではなく、敬意と決意を感じるようになった。