CEO予備軍のミドルアッパーマネジャー層が心がけるべきこと

 どんなテクノロジーもイノベーションもいずれ真似され、消耗戦に陥ります。拙著で紹介しましたが、成功体験を捨て、新たなナレッジを獲得し、異次元のレベルにLEAP〈跳躍〉しなければなりません。そのためには、トップが思い切って決断し、自ら介入して力を使う「ディープダイブ」が必要となります。

 ただ、大きな賭けには、必ずその前段階があります。成功するLEAPは盲目的な信念ではなく、確固たる証拠によってなされており、それは次の世代の人々、部長などのミドルアッパーマネジャー層がつくっています。ノバルティスが遺伝子工学の世界にLEAPしたのは、ミドルマネジメントクラスの科学者が開発を主張したからです。P&Gがタイドという合成洗剤を作った時もそうでした。

 このような実験、何が機能して何が機能しないのかという仮説の構築、これこそが次世代のリーダーがなすべきことです。最後に引き金を引くCEOという役割を果たすための滑走路として、これからどのようなイノベーションや実験をしていくべきかを考え、選び、実行する練習をミドル時代に積むわけです。会社の中に十分なバリエーションが存在できるよう環境を整え、その中から自ら選んでスケールしていく練習が大切だと思います。

 この感覚を培うには、リアルライフの経験が欠かせません。社内であれ会社を越えてであれ、ともかく、多様で豊かな文脈を経験することが大事です。成功するCEOはインサイド・アウトサイダー、つまり、今の会社のことを十分に知りながら、メインストリームではないところから来た人であることが多い。それゆえに他の人とは違うものの見方、考え方ができるわけです。複数のモデルのなかで経験を積み重ねたことで、既存のパラダイムに挑戦し、異議を呈することができるようになる。

 イノベーションは辺境から生まれるとよく言います。次にリーダーとなる人も、メインストリーム以外の多様な経験をしておく必要があるということです。

 いわゆるT型人材です。ただし、そのT型も進化しています。何らかのコアコンピテンスは必要ですが、それがAIに代替される可能性もあります。ですから、2つ目の縦軸として深い専門知識を持つことも重要となってくるでしょう。学ぶのが難しいドメインであっても、それを早く学んでいくことが必要になります。

 そのためにも先述の通り、自分のアジェンダを自分で管理し、新しい領域の知識を学ぶ時間を十分に確保すること大切なのです。