いかにGAFAの奴隷とならないようにするか

 人間のマネジャーの役割がさまざまな領域を越えて知識を統合していくということになるということは、すなわち、知的体力がますます問われるようになるということです。

 これまでは、勉強して学位を取る、働く、そして引退する、というように、人生を3つのステージに分けることができました。終身雇用が期待され、1つの組織の中でハシゴを上り、特定領域に関する深い知識・見識を開拓していくことが尊重されました。AIの進化によって深い知識が取って代わられ、コネクティビティのおかげでギグエコノミーが立ち上がり、かつてよりも速いスピードで大企業の寿命が短くなっています。当然ながら、これまでのキャリアの考え方も望ましくなくなっています。

 ですから個々人としては、新しいスキルを素早く身につけることが必須となります。時折、自分がやってきたことを一度やめてみて、近くの領域、あるいはまったく違う領域で新たなスキルを身につける。あるいは、いくつかはパートタイム、いくつかはフルタイムなど、ポートフォリオを組んでみる。これは教育、そして雇用をどのように仕組み化していくのかにも影響を及ぼします。

 重要なのは、オープンマインドを持ち、外部に対する好奇心を維持し、自分のアジェンダを管理して継続的に新しいスキルを身につけるための時間を確保できるようにすることです。

 GAFAなどのテックジャイアントが提供するビジネスは、私たちから集中力を奪い、私たちの気を散らせることで儲けています。私たちのアテンション、注意関心を断片化してしまうのです。しかも、やりたいことすら無意識のうちに軌道が敷かれてしまう。このような状況を脱しなければなりません。

 今後はいかにGAFAの奴隷にならないようにするかがカギを握ることになります。長期的な成功、そして幸せを追求するためには、自らのアジェンダを自らの手に取り戻さなければならないのです。

 そして、知的体力を培うためには、書籍や論文、長い記事をきちんと読むことが重要です。オンラインで記事を閲覧するのは私も好きですが、短い記事では深い分析ができません。私たちの心が何かのコンセプトをつかむためには、心理学者がフローと呼ぶような境地に至らなければいけません。数分程度で読める記事では機能しないのです。

 紙の本が大事なのは、グーグルのカスタマイゼーションに自分の世界観をコントロールされないからです。自分自身のメンタルモデルにチャレンジできるのです。世界にはさまざまなものの見方があり、偶然の力(セレンディピティ)によって、今まで考えたことがなかったようなトピックや興味に触れることができます。その意味では、リアル書店を歩き回ることも効果的です。

 ビル・ゲイツは稀代の読書家ですし、マーク・ザッカーバーグもリード・ホフマンも、この本を読んだという話をよくしています。むしろ自分たちのサービスをろくに使っていないのではないでしょうか。スティーブ・ジョブズに至っては、子どもたちにはiPhoneもiPadも触らせないようにしていました。つまりは、そういうことです。