●「やることリスト」をつくる

 やるべき仕事は、いつでもある。ベイラー大学とエモリー大学の研究によれば、寝る前に翌日の「やることリスト」をつくると、(睡眠薬を飲んだのとほぼ同じように)寝つきがよくなるうえ、夜中に目が覚める回数も減る。

 未完のタスクのことが頭の中を巡っている状態は「高レベルの認知活性」が続いている状態だと、同論文の筆頭著者マイケル・スカリンは説明する。眠れないのは、基本的にそのせいである。未完のタスクを書き出すと、その行為が覚醒や反芻、心配を抑える。

 夜寝ているときに突然急ぎの仕事を思い出してしまう人は、枕元に紙とペンを置き、いつでも書き留められるようにすること。そうして頭を空にすれば、安心して、また眠りに落ちることができる。

 ●日記をつける

 クライアントの一人であるトビーは、やっかいな同僚とのいざこざによるストレスに悩んでいた。とりわけ苦痛を感じる出来事が起きたある日、その内容と、なぜ自分がそこまで動揺したのかを書いたメールを私に送ってよこした。そのメールは、状況報告と、次回の面談で話したいことを私に伝えたくて書いたつもりだったそうだが、自分が体験したことや感じたことを書き出したら気持ちが楽になり、その晩はぐっすり眠れたのだと言う。

 ただ頭で考えているよりも、日記をつけたり、自分の考えや感情を書き出したりするほうが、高度な心理的処理を要するため、気持ちの整理やストレス・不安の緩和に役立つことがわかっている。また、書き出す内容に、よかったことや感謝していることも含めると、さらに寝ざめのいい長い睡眠が取れる。不安で夜眠れない大学生を対象としたある調査で、1週間、毎晩寝る前に日記を書くよう指示された無作為抽出グループは、就寝時のストレスや不安の緩和、睡眠時間や睡眠の質の向上が見られたと回答した。

 ●セルフ・コンパッションを実践する

 戦略室長を務めるサラが働くIT企業は、株価が下落傾向にあった。M&A戦略を役員会で提案したサラは、予想外の厳しい質問攻撃に遭い、思うような返しができず、最後は声も出なかった。それを一つの苦い経験として、今後の役員プレゼンで活かそうと割り切れればよかったのだが、この出来事を何度も頭の中で再生し、自分を責め、何週間も眠ることができなかった。

『セルフ・コンパッション』の著者クリスティーン・ネフは、セルフ・コンパッションとは、仲のよい友人に向けるような優しさや思いやり、気遣いを自分に向けることだと説明している。人間は完璧ではないことを認め、セルフ・コンパッションを実践することで、不眠症などを引き起こす反芻によるネガティブ思考や自己批判のスパイラルを断つことができるようになる。テキサス州立大学と中国の中山大学による調査も、セルフコンパッションがストレスによる睡眠不足を緩和することを裏付けている。

 ●体を動かす

 適度な運動を1回でも行うと、夜眠れない原因になっている反芻を減らす効果があることが、調査によって示されている。また一般的に、たった30分の有酸素運動で、寝つきが早くなり、睡眠の質が向上することを示す強力なエビデンスもある。

 運動は、深い眠りを増すだけでなく、脳の緊張をほぐす。ジョンズ・ホプキンスセンター・フォー・スリープで医長を務めるシャーリーン・ガマルドはこれを、「自然に睡眠に移行するために重要な認知過程」と呼んでいる。しかし、なかには就寝直前に運動すると、睡眠が妨げられる人もいる。そういう人には、寝る1時間から2時間以上前に運動することをお勧めする。

 ●瞑想する

 セルフ・コンパッションと同じように、マインドフルネス(いま、この瞬間の自分の思考、感情、身体感覚に、いっさいの判断を交えず神経を集中させる行為)も、夜眠れない原因となる反芻を緩和させる働きをする。いまだけに意識することで、過去の出来事を繰り返し思い出したり、先のことを心配したりせずに済む。

 瞑想が不安やストレスに好影響を与えることは、多数の調査によって裏づけられている。さらに、オランダで実施された調査では、マインドフルな瞑想を短期間(仕事の前と後の各10分を2週間続ける)実施するだけでも、思考が巡るのを鎮めて、睡眠の質と時間を向上させることがわかっている。

 仕事によるストレスがなくなることはないが、夜の快適な眠りがそれで妨げられるのは避けたいものだ。上記の方法を取り入れ、朝快適に目覚める力を高め、リフレッシュした状態で仕事に向かおう。


HBR.org原文:How to Stop Thinking About Work at 3am, December 20, 2019.

レベッカ・ザッカー(Rebecca Zucker)
リーダーシップ開発を専門とするネクスト・ステップ・パートナーズの共同創業者・経営者兼エグゼクティブ・コーチ。クライアントに、アマゾン、クロロックス、モリソン・フォースター、ジェームズアーバイン財団、スコール財団の他、ドキュサインやドロップボックスなど急成長中のテクノロジー企業がある。ツイッターは@rszucker


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