では、プレゼンスとは、具体的にどのようなものなのか。

 まず指摘できるのは、話し手の関心が自分の外に向くことだ。自分がどう思われるかより、聞き手がメッセージを理解しているかを気にかける。

 プレゼンスの持ち主はスピーチをする間、自分が発する言葉についてよく考える。これは、スピーチの内容を丸暗記して臨むのとは正反対の姿勢だ。丸暗記方式はプレゼンスを妨げる。原稿を読んでスピーチをする場合も、自分の発する言葉について考えることが重要だ。

 とはいえ、それは口で言うほど簡単ではない。往々にして、スピーチの場では不安がこみ上げてきて、目の前の状況から意識が離れてしまう。

 いまこの瞬間に集中しようとしても、どうしても過去に意識が向いてしまうと、私に打ち明ける人が多い。失敗したスピーチのことや避けたスピーチのことを思い出さずにいられないのだ。

 逆に、未来のことばかり考えてしまう人もいる。自分のスピーチに対して聴衆がどのように反応するかとか、スピーチに失敗したらどうなるかと心配したりする(そして、きっと失敗するに違いないと思い込む)。

 スピーチで目の前の聴衆と全面的に向き合うために、どのようにプレゼンスを育めばよいのか。その一歩を踏み出すための方法を紹介しよう。

(1)プレゼンスを持つ準備をする

 スピーチの用意を始めた瞬間から、聴衆がどのような人たちで、その人たちがあなたに何を求めているかに意識を集中させよう。聞き手のニーズを中心に話すことを心掛ければ、聴衆と向き合いやすくなる。聞き手がどのような人たちかを考えることを忘れずに!

(2)プレゼンスの練習を積む

 練習を重ねるたびに、(架空の聴衆であるにせよ)聴衆にメッセージを届けるという意識を高めていこう。自分が集中力を失い、いわば自動運転状態で話していることに気づいたら、ただちにストップして、そのセンテンスを言い直す。

(3)目の前のことに意識を集中させる

 スピーチの前に、目の前のことに意識を集中させる妨げになっている要素をすべて紙に書き出し、その紙を手元から遠ざけよう。

 私の顧客にこの作業をさせると、たくさんの事項が書き出されることが多い。過去にスピーチで失敗した苦い記憶、準備が足りないのではないかという不安、聴衆がどのような反応を示すかという恐れ、このあと予定されている会議への懸念など、スピーチへの集中を妨げる要素がずらりと並ぶ。

 少し時間を取ってそうした要素を紙に書き出し、その紙を自分から遠ざければ、スピーチを行うという目の前の課題に再び意識を集中する助けになる。

(4)自分の体をその場に置く

 話を始める直前に、15秒ほど「オープンな姿勢」を取ろう。聴衆に対してオープンな姿勢を取ることによって、聴衆と全面的に向き合う時間であることを脳に伝えられる。

 オープンな姿勢とは、具体的にどのような姿勢なのか。椅子に座っている場合は、深く腰掛けて体の力を抜き、両手をテーブルに置く。そして、ゆっくり呼吸をし、聴衆を見る。オープンな姿勢を意識的に取り、「聴衆と向き合う準備ができたぞ」というシグナルを脳に向けて発すれば、おのずと緊張が和らぐ。

(5)プレゼンスを持って話しはじめる

 最初の言葉を発する前に、深呼吸をして、聴衆をまっすぐ見よう。そのあと、「みなさん」という言葉を含むセンテンスでスピーチを切り出す。「ここにいらっしゃるみなさん一人ひとりが……」とか、「今日はみなさんに、××の威力についてお話ししたいと思います」といった具合だ。このような言葉を発することにより、いま自分が聴衆に意識を集中させているのだと、自分の脳に伝達できる。

(6)プレゼンスとともに語る

 スピーチをしている間は、聴衆一人ひとりにエネルギーを向けよう。順番に聴衆の顔を一人ずつ見て話し、一人ひとりがメッセージを完全に理解するよう気を配るのだ。

***

 プレゼンスは、誰でも育むことができる。これは、内向的な人が、ひときわ得意なことだ。外向的な性格の人にも優れたプレゼンスの持ち主がたくさんいるが、内向的な人には特筆すべき強みが1つある。内向的な人は、外向的な人に比べて、聴衆からのエネルギーを要求しないので、聴衆と向き合いやすいのだ。

 前出のCEOは、この点を理解した瞬間、スピーチへの姿勢が一変した。自分が聴衆に好かれないのではないかと心配することをやめ、本当に重要なこと、すなわち聴衆の役に立とうと努めることに、集中できるようになったのだ。

 上手なスピーチをするためには、必ずしもカリスマ性を持っていなくてもよい。カリスマ性よりも大切なのは、プレゼンスなのである。


HBR.org原文:Do You Need Charisma to Be a Great Public Speaker? December 13, 2019.

サラ・ガーシュマン(Sarah Gershman)
ワシントンDCの話し方教室、グリーン・ルーム・スピーカーズ社長。ジョージタウン大学マクドノー経営大学院教授。世界中から集まった学生にパブリックスピーキングを教えている。


■こちらの記事もおすすめします
プレゼンが上手な人は聞き手に「思いやり」を持っている
プレゼンに自信がなくても自信たっぷりに見せる方法
「えーと」「あー」というつなぎ表現を戦略的に使う3つの方法