研究(1):家庭でのサポート

 最初に、オランダの22~57歳の共稼ぎ夫婦26組を調査した。そのうち89%は子持ちで、全員が週3日以上(男性約42.8時間、女性約29.8時間)働き、業種はサービス業から建設業まで多岐にわたる。

 全員にノートを配り、1日2 回、5日間、簡単な日誌を書いてもらった。1回目は、仕事から帰宅したときに、その日を振り返り、仕事で精神的に大変だったこと(難しい顧客、プロジェクト、締め切りへの対応など)について、そして同僚から精神的なサポートがあったかどうかを記入させた。2回目は、就寝前に家庭で過ごした時間を評価させた。配偶者の悩みを聞いたり、愛情を示したりなどの精神的なサポートを、どれだけ与えられたか。さらに、その晩の家族の関係を採点させ、それぞれが互いに仲良く過ごせたかを記録させた。

 その結果、仕事で起きたことが家庭での人間関係に大きく影響すること、ただし影響の仕方は、夫と妻とではかなり違うことがわかった。たとえば、調査に参加したある夫婦、ティム(仮名、36歳)とリサ(仮名、31歳)は、どちらも学校の先生で、10歳に満たない子どもが3人いる。ティムは週5日38時間働き、リサは週3日24時間働いている。

 教室で精神的に消耗した日のティムは、帰宅後、リサの話を聞いていなかったと、ティムもリサも記録している。リサがその日あったことを話しているときに、うわの空で、愛情を示したり、リサの気持ちを気遣ったりしなかった。そのため2人とも、家族で過ごした時間を低く(息が詰まり、楽しくなかった)評価した。

 このパターンは、参加者すべての間で見られる。つまり、仕事で精神的ストレスが大きかった日は、帰宅した夫から妻へのサポートは減少した。そのような日は、夫妻ともに、家族で過ごした時間を低く採点することが多かった。

 これとは対照的に、妻が同じ状況に置かれたときには、仕事上のストレスは、夫へのサポートの量にも、家族で過ごす時間の質にも影響しなかった。たとえばリサは、精神的に辛い仕事があった日にも、帰宅したティムを迎えに出たため、家族で過ごした時間に影響はなかった。それだけでなく、仕事がうまくいった日は、ティムへの精神的サポートがいつも以上に増し、家族で過ごす時間の質が全体的に向上した。

 これもまた、女性参加者に見られるパターンである。一方、男性は、仕事がうまくいった日でも、妻に対する精神的サポートが増えることはなく、家族で過ごす時間の質も向上していない。

 これらの結果を得て、我々は同じ研究を逆の方向でも実施することにした。

研究その(2):職場でのサポート

 2つ目の研究では、家族との生活も同様に、職場の同僚への精神的なサポートの量に影響するのか、そして男女のパターンが一貫して見られるのかどうかを探った。調査対象は、オランダの18~64歳の会社員128人(同僚64組)。女性92人は週約30.3時間、男性35人は週約39.3時間働き、1人は性別を明らかにしていない。今回は、63%が子持ちだった。

 参加者全員に1日2回、5日間連続で日誌を書かせた。仕事を始める前に、朝の家庭での様子を振り返り、精神的負担を感じたこと(家族とのケンカや、気まずかった時間など)や、配偶者から感謝や愛情を受けたことがあれば、それを記録させた。仕事が終わったら、一番つながりのある同僚にどれだけ精神的サポートを与えたか(相談に乗る、励ますなど)を評価させた。また、メンバーが協力的で、一緒にいて楽しかったかどうかによって、その日のチーム全体の関係の良し悪しを採点させた。

 結果は、最初の研究とまったく同じく、男女のパターンが見られた。朝から精神的に疲れた男性は、同僚をあまりサポートせず、結果的にチームの関係が悪化した。一方、女性は、朝に家で嫌なことがあっても、同僚へのサポートの量に変化はなかった。前回の結果と同じように、朝いいことがあった女性は、一番つながりのある同僚にいつもよりも多く精神的サポートを与える傾向があり、その結果、チーム全体の人間関係が良好だった。

 どちらの研究でも、男性は、一方の役割が重くなると、精神的サポートの提供を減らすパターンが確認された。女性は、一方の役割の重さに関係なく精神的サポートを提供し、一方の役割でサポートを受けると、他方の役割でより多くの精神的サポートを提供することによってサポートを「受け継ぎ」、それによって良好な関係を築いていた。

考えられる理由

 これはいくつかある。第1に、ジェンダー規範が向社会的行動に影響を与える、と考えることができる。男女の行動に関するステレオタイプは、どんどん時代遅れになっているが、調査によれば、男女は小さい頃からそれぞれ異なる期待を受けて育つ。

 女性は共同的(communal)属性を持つことを期待される場合が多く、典型的には、それが他者の世話や養育といった行動に現れる。家族や地域社会の中で人間関係を司るキン・キーパー(一族の守り手)となるよう強制される。男性は歴史的に、若い頃から作動的(agentic)――合理的、戦略的、確信的――属性を持つことを期待され、結果として、協調性や思いやりが犠牲になる。

 規範は根強く、変化に時間がかかるため、女性参加者は、職場や家庭で人間関係を維持する責任を男性よりも感じていた可能性がある。その結果、女性陣は、一方の領域における負担が他方の人間関係を害するのを防ぎ、一方のリソースを他方の人間関係の向上に活かしたが、男性陣は、それをやる義務を感じなかったと考えることができる。

 第2に、それといくらか関連するが、女性は、どれほど地位が高く高給取りであっても、相変わらず家事と育児の主体である場合が多く、そのため家庭での責任を夫よりも重く感じている可能性がある。

 オランダでも男性が大黒柱である割合は減少しているにもかかわらず、夫婦がアウトソースしない家事育児のうち、男性は33%しか分担しないのに比べ、女性はいまだに67%分担している。したがって、仕事が大変だった日のマイナス影響を女性参加者が表に出さず、家庭での役割に対する期待に応えたと考えてもおかしくない。

 また男性は、家事育児を引き受けるようになってきているものの、ある研究によれば、一般的には、家庭人としてよりも仕事上の責任を果たしている自分を強く認識している傾向がある。そのため男性参加者は、仕事の疲れを家で隠す必要をあまり感じなかったと考えられる。

 こうした歴史的な性役割は、女性が職場でもよくサポートを提供する理由を説明していると言える。女性は、企業において特に、出世の道が険しいため、家庭の負担がパフォーマンスを妨げないようにより努力し、その代わりに、家族のリソースを利用して職場での人間関係をいっそう向上させようとする。さらには、パートタイムで働く女性は、男性ほど外で働くのは自分の仕事だと思っていない可能性がある。

 それとは対照的に男性は、働き手としての役割を当たり前に捉え、家族の負担がパフォーマンス――特に同僚の話を聞き、関心を示すこと――に影響しても、失うものが少ないと考えている人が多いと考えられる。当然重要ではあるのに、男性は、精神的サポートを与えるその行動が、自分のメインの仕事ではないと合理的に解釈し、その理屈でもって軽視することができるのだ。