自己超越を体験するために瞑想を実践する

 マインドフルネス瞑想でしか、自己超越を体験できないわけではない。ジョギング、料理、楽器の演奏、その他、何かの活動に一心に打ち込んでいるときも、エゴへの執着が消えることがある。だが、瞑想はもっと直接的な手段だ。以下の方法で、あなたもその体験をつくり出すことができる。

 ●心を鎮めることに集中する

 最も簡単なマインドフルネス瞑想のやり方は、どこか静かな場所を見つけ、椅子かクッションにリラックスして座り、5分から25分の間でタイマーを設定する。それから、自分の呼吸を観察する。息を吸って1、息を吐いて2、というように呼吸をカウントし、10までいったら1に戻る。

 どの方法でやるにしろ、心の中に絶えず思考が流れている(1日に約7万に上る)ことに気づくだろう。心をそうした思考から遠ざけ、開かれた状態の意識を体験する。

 ●定期的に毎日実践する

 自己超越は短いセッションでも体験できるが、安定した状態を維持するには、定期的に実践する必要がある。たまにジムに行くのは楽しいけれども筋肉は鍛えられないのと同様、不定期に瞑想しても自己超越を一貫して体験することはできない。私が指導する管理職の人々の大半は、1日最低20分間、瞑想をする。たいてい、朝早めに起きて1日を瞑想で始めるのが、最も身につきやすい。

 ●長時間の沈黙の機会を見つける

 ほとんどの人は、瞑想する時間が長いほど、心は鎮まり、やがて思考が消えていくのに気づく。エゴの意識をつくり出すのは思考なので、思考が消えると、エゴも消えていく。常に新しい刺激(メール、ニュース、ソーシャルメディアなど)にさらされる世界では、沈黙の時間を意識的に見つける必要がある。経験豊かな瞑想の教師が指導する長時間の「リトリート」に行ってもよいし、1日の中で新しい情報を取り込まない時間をつくってもよいだろう。

 ●1日を通して、問題に直面した際、自己超越の洞察を適用する

 職場でも1日を通して、瞑想の実践で得たものを用い、エゴへの執着を和らげよう。会議を始める前やメールを開く前に数回、呼吸を意識することで、心を鎮めることができる。

 また、即座に実践できるものもある。たとえば会議の場に座っているときやメールに返信しているとき、自分の呼吸に意識を集中し、個人攻撃を受けたかのように感じていないか注意する。数回、息を吸って吐くと、エゴへの固執が弱まるだろう。

 約10年前、私はマッキンゼーのコンサルタントとして多忙な日々を送っていたが、幸いにも、長期研究休暇を取って、3ヵ月間の沈黙のリトリートに参加することができた。

 瞑想の教師との週1回の会話で、あるとき、こう言われた。「忘れないでください。あなたは存在しないのです」 そのときはさっぱり意味がわからず、しばらくしてからやっと、自己超越は頭で理解できるものではないことに気づいた。実践することが必要なのだ。


HBR.org原文:What Meditation Can Do for Your Leadership, December 06, 2019.

マティアス・ビルク(Matthias Birk)
20年以上にわたり瞑想を実践し、コロンビア・ビジネススクール、ニューヨーク大学、ゴールドマンサックスやマッキンゼーなどの企業で、何百人もの管理職に瞑想とリーダーシップを教えてきた。博士。


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