物事をより客観的にとらえる

 エゴは自分の正しさを望み、失敗を脅威ととらえる。瞑想を実践すると、エゴへの執着が薄れていき、結果として、自分への個人攻撃ととらえる傾向も薄れていく。

 たとえばリンクトインで顧客オペレーション部長を務めたスコット・シュートは、現在、同社でマインドフルネス・プログラムを指導している。彼は1日を通して「決断するのが不安なときや、批判に対して自己弁護したくなるときなど、マインドフルネスを実践しています。呼吸をして、数分間、黙想すると、さっきまでフラストレーションの種だったものが、楽しいものにさえ思えてきます。細部にまで注意を払うことができ、それまで見えなかったものが見えてきます」と、私に説明してくれた。

 大手小売会社の社長ジェフは、私のリーダーシップ・ワークショップの一環である瞑想のセッションで、同じような体験をした。

 彼はセッションの直前に、新しいCEOからメールをもらっていた。ジェフはこう言った。「頭の中でいろいろな思いが駆け巡り、イライラして、不当に責められている気分でした。瞑想の後、メールを読み直したのです。もう心は落ち着いていて、思わず笑みが浮かびました。メールを全文、私個人への批判だと思い込んで受け止めていたことに気づきました。瞑想したあとは、あるがままに見ることができました。ただ、対応すべき具体的な事柄がいくつか書いてあっただけなのです」。

 短い瞑想でもエゴへの執着は薄まり、彼は脅威を感じることなくメールを読み、適切に対処することができた。

より深い関係を築く

 こうした体験はリーダーの関係を根本的に変え、リーダーはより深い共感とつながりを通して指導できるようになる。

 リンクトインのグローバル・エージェンシー・セールスを率いるマイク・ロモフは、数ヵ月にわたって瞑想を実践したあと、こう言った。「すべての存在はつながっていると、だんだんわかってきました。他者に対して、独立した存在であるかのように敵意を抱くという概念そのものが無意味になりました」

 配下の部署が別の部署に激しいライバル意識を燃やしていることに気づいたロモフは、相手の部署との緊張を高めるのではなく手助けすることにした。「プロジェクトは前進し、部署間の対立は解消し、大きな進歩を遂げることができました。私のキャリアにも大きなプラスになりました。協調して問題を解決する能力があるという評判を得たのです」

 瞑想は「扱いにくい」同僚への対処にも役立つ。瞑想をすると、生産的行動を起こす妨げになるような、自分の心がつくり出す不安に根差したナラティブ(物語)を疑えるようになる。

 たとえば大手メディア企業の上級管理職であるマリサの場合、瞑想を始めて数年になるが、長年、扱いにくい同僚の問題行動について、率直に対処できていなかった。あるとき、マリサはしばらく瞑想したあとで、「恐れている自分が消えた」ことに気づき、もう彼と向き合うのが怖くなくなった。同僚にストレートに事実を指摘したとき、「宇宙が私を通して語りかけている」と感じたという。

 以前のような不安や感情的葛藤なしに、事実を明確にとらえて伝えることができた。驚いたことに、同僚は喜んで彼女に耳を傾け、その行動をやめると言ってくれた。