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多文化な社会や集団とは何かはよく議論されるが、「多文化な個人」とはどのような人を指すのだろうか。血縁の多様性があることか、複数の国で暮らした経験があることなのか、その定義は実に曖昧である。筆者らのチームが実施した研究により、個人の多文化度は、複数の文化に関する「知識」「帰属意識」「内面化」の度合いで決まることが判明した。


 多文化な社会や集団については、誰しも耳にしたことがあるはずだ。では、「多文化な個人」についてはどうだろうか。その人によって組織に何がもたらされるのかを、考えたことはあるだろうか。

 多文化な人――たとえば中国系カナダ人、トルコ系ドイツ人、アラブ系米国人など――の思考、認識、行動のあり方は、単一文化の人よりも複雑である場合が多い。グローバルな職場に伴う問題への反応についても同様だ。

 こうした特性が、キャリアの成功につながっている多文化者もいる。

 一例として、シリコンバレーで働く100人のイスラエル人マネジャーを対象とした研究がある。イスラエル系米国人マネジャーは、みずからをイスラエル文化または米国文化のどちらか一方のみに属すると自覚するマネジャーに比べ、思考がより複雑であった。その結果、同等職者から有能なマネジャーと評価される傾向がより高く、昇進のスピードもより早かった。

 多くの人は、自身が多文化的なのか否かをよくわかっていない。両親や祖父母が移民である、国際的な仕事をしている、多文化都市に住んでいるなどをもって、自分は多文化的だといえるのだろうか。

 これは、専門家でも答えるのが難しい問いである。なぜなら、「多文化性」の定義は、実に多種多様だからだ。

 たとえば、香港には植民地としての歴史があるため、香港市民は多文化である、と主張する研究者がいる。一方で、多文化者とは2つ以上の文化において有能性を発揮できる人、という定義もある。これには、複数の言語に通じている「多文化意識」を持っている(複数の文化を反映した思考ができる)、などが含まれる。

 本稿の筆者らは、研究者6人からなる国際的な研究チームであり、16の文化を反映している。そこで我々は、過去のあらゆる定義のよい部分を集約するという方法で、定義をめぐる混乱を解決することにした。

 その過程でわかったのは、人々の多文化性には、いくつかの異なるレベルがありうるということだ。筆者らは、社会学、人類学、心理学、および経営学やマーケティング学などの分野にわたる183件の研究論文を読んだ後、次のような定義を打ち出した。個人の多文化性は、複数の文化に関する「知識」「帰属意識」「内面化」の度合いで決まるのだ。

 それぞれの側面に関する以降の問いに答えることで、自分の多文化度を測定できる。文化を広い意味で捉えてみよう。たとえば、国の文化、国境を越えて広がる社会構成的文化(アラブ文化など)、国内の地域文化(インド国内のベンガル文化やパンジャブ文化など)、混合文化、そして交差文化(メティス〔カナダの先住民とヨーロッパ系住民との混血子孫〕の文化など)もある。