「レジリエンス」(再起力)はいまや、ビジネスリーダーが習得すべき必須のスキルだと言われている。それは、個人のみならず、組織にもレジリエンスが求められるからである。イーベイやグーグルで学習や組織開発の責任者を務め、SIYLI(サーチ・インサイド・ユアセルフ・リーダーシップ・インスティテュート)のCEOであるリッチ・フェルナンデス氏に、米国企業の最新事例を交えながら、レジリエンスの必要性や高め方などを語ってもらった。(構成:富岡修、写真提供:一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート)


「レジリエンス」はかねてから、被災や親しき人との離別など、人生における重大な困難や苦境から復元(バウンスバック)するために必要なスキルとして受け入れられてきた。さらには、ビジネス領域において、多大なストレスやプレッシャーにさらされるリーダーたちが、逆境をはねのけて成果をあげるために、多くのグローバル企業でトレーニングなどが行われてきた。

リッチ・フェルナンデス(Rich Fernandez)
世界中のコミュニティや組織に向け、マインドフルネスや心の知能に関するプログラムを提供しているSIYLI(サーチ・インサイド・ユアセルフ・リーダーシップ・インスティテュート:グーグルで開発されたリーダーシッププログラムを世界展開するNPO)のCEO。また組織に向けマインドフルネス、レジリエンス、繁栄の科学を提供するウィズダム・ラボの共同創設者でもある。心理学博士。Twitter @_richfernandez

 しかし、イーベイやグーグルで学習や組織開発の責任者を務め、SIYLIのCEOであるリッチ・フェルナンデス氏によれば、米国におけるレジリエンスへの取り組みは、新たなステージへと移行しつつあるという。

「バウンスバックするまでの過程は、レジリエンスの基本的で重要なスキルであることに変わりはありません。しかし、米国でのレジリエンスへの取り組みは、バウンスバックの過程で学んだことを生かし、さらに大きく飛躍するためのスキルとして活用されつつあります」(フェルナンデス氏)。 

 マイナス地点からゼロ地点に戻すだけでなく、プラスに向かう方向でも活用され始めたということだ。それに伴い、個人のレジリエンスのみならず、組織のレジリエンスをいかに高めるかに注目が集まっている。

 日本のビジネスリーダーの多くが抱いているレジリエンスのイメージがバージョン「1.0」だとすると、米国でのレジリエンス活用のステージは「2.0」へと進化していると言えるだろう。

組織のレジリエンスを高める効果(1) ビジネスモデル/組織変革

 レジリエンス2.0の目的は「バウンスバックまでの過程で得たレジリエンスに磨きをかけ、変化の激しい時代に素早く適応し、より大きな変革や成功に結び付ける」(フェルナンデス氏)ことにある。こうした進化したレジリエンス2.0を体現している好例がマイクロソフトだという。

 マイクロソフトは、パソコンのオペレーティングソフト「ウィンドウズ」や業務支援ソフト「オフィス」で高いシェアを誇っていたものの、スマートフォン対応やクラウド化の波に遅れ、アップルやグーグル、アマゾンの後塵を拝していた。

 しかし、2014年にサティア・ナデラ氏がCEOに就任した頃から経営戦略を大きく転換。リンクドインなどのクラウドサービス企業を買収し、クラウドコンピューティングサービスの「Azure」やタブレットパソコンなどの「サーフェイス」など革新的なサービスや製品を生み出した。

 その勢いは今も続いている。最近では、米国防総省のクラウド構築の契約を本命と言われていたアマゾンを退けて締結したり、サーフェイスでは来年のホリデーシーズンの発売に向けて革新的な2画面デバイスを2機種発表したりするなど盤石だ。投資家の期待も高く、株価もうなぎ登りだ。

 では、大きな変革や成功に結びつけるレジリエンスで核となる力は何だろうか。

 フェルナンデス氏によると、キーワードは「アジャイル」(俊敏性)と「アダプタブル」(適応性)、そして、これらによって得られる「フレキシビリティ」(柔軟性)だと言う。

「マイクロソフトの例で言うと、困難な状況から回復する過程で高まったレジリエンスによって、組織の俊敏性や適応力は大きく高まりました。それにより、組織の柔軟性が増し、以前では考えられなかった経営戦略を選択し、実行できるようになったのです」