不確実性の高い環境で難しい課題に取り組むビジネスリーダーが習得すべきスキルとして、レジリエンス(再起力)が注目されている。EIシリーズ最新刊『レジリエンス』の刊行を記念し、一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュートの荻野淳也氏・吉田典生氏が、カルビー常務執行役員の武田雅子氏をゲストに招き、レジリエンスの必要性や、その高め方などを議論した。(構成:富岡修、写真提供:一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート)


「レジリエンス」という言葉を日本語で表現するのは難しい。再起力、復元力、回復力、立ち直る力……訳語としてはいろいろな表現がありえるが、つまるところ、どのような意味なのだろうか。一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)の荻野淳也氏は、このように説明する。

武田雅子(たけだ・まさこ)
カルビー株式会社 常務執行役員 人事総務本部長。1968年東京生まれ。89年に株式会社クレディセゾン入社。全国のセゾンカウンターで店舗責任者を経験後、営業推進部トレーニング課にて現場の教育指導を手掛ける。その後戦略人事部にて人材開発などを担当し、2014年人事担当取締役に就任。2016年には営業推進事業部トップとして大幅な組織改革を推進。2018年5月カルビー株式会社に転職、翌年4月より常務執行役員。全員が活躍する組織の実現に向けて人事制度改定など施策を推進中。

「レジリエンスの第一義は、危機や困難などといったどん底の状態から立ち直る力を意味しています。実際、米国では2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件、日本では2011年に起きた東日本大震災以降、急速に普及しました」

 米国では以来、レジリエンスを個人に必要なスキルととらえ、その利用範囲が徐々に広がってきた。いまでは、レジリエンスは危機から立ち直る際の対処だけでなく、日々の仕事や生活でも生かせるスキルとして浸透している。そして最近では、個人のレジリエンスを高める取り組みに加えて、組織のレジリエンスを高める取り組みも進んでいると、荻野氏は補足する。

 一方、日本での普及は、まだ途上にある。その理由として、MiLIの吉田典生氏は、レジリエンスを誤解している人が多いからではないか、と述べる。

「レジリエンスと言うと、心身を強靭に鍛え、どんな危機に陥っても落ち込まない不屈の精神と持つこと、というイメージが先行しているように思います。もっと気楽に考えたらいいのではないでしょうか」

 実際に、吉田氏は経営者にコーチングを行うなかで、優秀な経営者は落ち込んでも回復するのが早いことに気づいた、と述べる。

「どんな優秀な経営者でも失敗するし、モチベーションに波もあります。しかし、問題は失敗でも落ち込むことでもなく、悪い状態が長く続くことなのです」

 それでは、日々の仕事や生活のストレスから素早く回復するためのレジリエンスは、どのように身に着ければよいのだろうか。カルビー常務執行役員・人事総務本部長として組織を束ねる武田雅子氏は以下のように語る。

「セルフマネジメントの手始めとしては、まず、自分自身を『頭(思考)』『体』『心(感情)』の3つに分けてモニタリングしてみてください。昨今のビジネスリーダーは、頭(思考)ばかりを重視していて、体や心のケアをないがしろにしていることが多いのです」

 武田氏自身がこのことに気づいたのは、36歳でがんとなり、その治療の副作用として、うつ症状が出たことがきっかけだという。

「そのときは本当に、自分が自分でないような気がしました。頭では、これをやらなきゃとわかっていても、動けないんです。病気で体力も落ちていて、感情もついてこない。頭と体と心、3つすべてがバラバラでした」

 いくら思考が明晰でも、心と体のコンディションが整っていなければ、思うように行動できない。そのことを痛感した出来事だったと、武田氏は振り返る。

「どれかひとつ欠けてもダメなんですよね。それからは3つのコンディションを常に意識するようにして、調子が悪いところを早めにケアするようにしました」