調査開始来最低の出生数
最悪の男女格差ランキング

 日本の現実を直視すると、未来は必ずしも明るいものではありません。

 先月12月24日、厚生労働省が発表した人口動態統計の推計では、2019年の国内出生数は86万4千人で、前年比5.92%と急減しました。90万人割れは1899年の統計開始以来初めてです。

 要因は、出産適齢期にある女性数の減少、生涯未婚率増加、晩婚化など複数考えられます。結婚しても、経済的理由で子供を産まない夫婦が増えているという見方もあります。

 同月17日に世界経済フォーラムが発表した国別の男女格差を示す「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は、総合ランキングで153カ国中121位。2006年から続く同調査において過去最低順位、つまり最悪のランキングで、106位の中国、108位の韓国、112位のインドよりも低位です。

 指数は政治、経済、教育、健康の4分野14項目から算出されていますが、日本は政治(144位)と経済(115位)の分野における男女格差が顕著です。議員比率や管理職比率、所得などでのギャップが影響しています。

 同月12日に日本アカデメイアが開催した第1回「東京会議」では、世界と日本が抱える課題と、その解決策を日米仏の識者が議論しました。

 少子高齢化などを主因とする日本社会の低迷に対する解決策として、経済学者ジャック・アタリ氏が指摘したのが女性活躍の促進です。

 具体策として、期間限定で女性に議員数の一定比率を割り当てるクオーター制を提唱していました。実際、OECD加盟国でも欧州など多くの国が導入しています。政策立案に女性の意見が反映されやすくなり、男女の所得格差が解消されていけば、女性が子供を産みやすくなる環境が整っていくと見られています。

 こうした課題を、個の視点で考えるのが、前述した今月号の特集です。多くの人にとって、まさに目の前にある具体的な課題への克服論です。

 このテーマは、もっと深く考えたいところです。そこでお薦めしたい書籍が、『仕事と家庭は両立できない?』(アン=マリー・スローター著、関美和訳、篠田真貴子解説、NTT出版、2017年)。

 著者はプリンストン大学教授。2009年にヒラリー・クリントン国務長官から誘われ、国務省政策企画本部長に就任。2人の子供を夫に託して単身赴任しますが、反抗期の息子が問題行動を起こすようになり、2年間で家族の元に帰ります。その間に考えたことなどを老舗月刊誌アトランティックに発表すると、大反響。その賛否の意見を受け止め、それに応える形で3年間かけて著したものです。

 大学者なればこその数多の文献や統計資料の活用、記事の読者や講演聴衆者との交流から得た具体事例、そして自分自身の経験を織り交ぜて、主に女性が、仕事での成功と家族と生きる幸福を共に得ようとする際の悲喜こもごも、葛藤を克明に著しています。

 特に惹かれるのは、「正直に言えば」という表現の後に続く、本の随所で見られる本音の吐露です。

 仕事と私生活を両立させるために、適切な政策や企業制度は必要ですが、最も大切で効果的なのは、スローター氏が見いだした「競争もケアも等しく本源的な人間の性質。現代は競争に価値を置きすぎ、ケアに十分な価値を認めていない。この歪みが課題の根幹。そこを社会全体で見直して行くべき」といった考え方だと思いました(編集長・大坪亮)。