ハーバード・ビジネス・レビュー編集部がおすすめの経営書を紹介する連載。ジェフ・タフ氏らによる『ベストプラクティスを吹き飛ばせ』を紹介する。

起業家に備わる特性を
既存企業に応用する

 過激なタイトルの書籍である。先進企業の取り組みや過去の成功体験である「ベストプラクティス」の実行は、企業が利益を高める有効な方法である。ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授は、「日本企業には戦略がない」と批判してきたが、1980年代まで日本企業が急成長を果たしてきた要因として、高い業務効果を挙げ、そのための方法論として、ベストプラクティスの実行を指摘している。そのベストプラクティス思考をDetonate(爆破)ことを提唱するのが、本書なのである。

 なぜか。時代が、2つの大変革を迎えているからだ。1つはデジタルテクノロジーの浸透を契機としたビジネスモデルや産業構造の変革、もう1つはSDGsがもたらした社会価値を競争戦略に織り込むCSV(共創価値創造)への経営構造の変革、である。

 この状況を前に、変化を予測するのではなく、未来を自ら切り開く経営が求められている、と著者らは説く。そのための筋道を次の通り、本書では順序よく解説していく。

 まず、この常識破りを読者に納得してもらうため、Detonateのマインドセットをもつ必要があることを詳述する。例えば、過去5年間の変化の性質を掘り下げ、過去から学んだ多くのことが将来の参考にはまずならないことを例証する。次に、このマインドセットを身につけるのに役立つ4つの原則を紹介する。

 中盤では、7つのDetonate行動を示し、なぜそうすべきか、その後、どのような慣行に置き換えるべきかを論じる。具体的には、(1)財務計画の解体、(2)戦略計画スケジュールの廃棄、(3)専門知識からの脱却、(4)インサイトの見直し、(5)コントロールの放棄、(6)陳腐なスローガンの破棄、(7)無常観の採用、である。これらの指針は、端的に言えば、起業家に備わる特性を、既存企業に応用する方法ということになる。

 最後に、こうした改革を、長期的に成功へと結実させるには、どうすればよいかを提示している。