ふさわしくない相手との交渉で時間を無駄にしない

 関係を築こうとしたり、交渉したりしている最中は、潜在的なクライアントを王様のように扱いたくなるかもしれない。だが、その代償は高くつくおそれがある。多くの時間を費やしたにもかかわらず、結局仕事につながらなかったと嘆くフリーランスは少なくない。

 クライアントになる可能性がある相手と接し始めるとき、どの程度の労力を費やすかを決めるうえで考慮すべき、鍵となる基準が2つある。それは、報酬と価値だ。

 報酬とはすなわち、契約の成立時に受け取ることになっている金額である。報酬が多いほど、交渉にかける時間と労力を正当化できる。価値は、それよりもあいまいだ。自分の仕事がクライアントにどのくらい認められているか、自分がそのプロジェクトにどれほどの熱意を持てるか、といったことを指す。

 この2つの要素をグリッドで示すと次の通りだ。

 明らかに、右上の四角に属するクライアント、すなわちあなたの仕事を認めて高い報酬を払うクライアントは最優先に値する。謝意を表して、速やかに返答すべきだ。そのようなクライアントを当然と思い、感謝の気持ちを忘れてはいけない。

 同様に、左下の四角に属するクライアントと付き合うのは、クライアントが間もなく、他の四角に移動すると思える理由があるときだけだ。たとえば、そのクライアントの興味を引くようなサービスを始めようとする場合である。

 他の2つの四角は、もっと面白い。

 右下の四角は割のいい契約になりそうだが、関係がいま一つの状態だ。あなたの仕事のスタイルとしっくり合わないか、よい人間関係が築けずにいる状態が考えられる。潜在的なクライアントで、交渉担当者が個人的に同意できかねる指示を受けたとき、あるいは根本的に自社の経営陣に賛成できないとき、この枠に入ることが多い。その場合、交渉時の話を額面通りに受け取ってはいけない。結局、話が立ち消えになるおそれが高い。

 左上の四角が最も危険である。ここでは、結果を生む関係を築ける可能性を秘めつつも、フリーランスの申し出とクライアントのニーズがかみ合っていない。最終的に報酬を得られる仕事がくる見込みがわずかにあるがゆえに、フリーランスはクライアントのために好意で、雑用をわずかな報酬あるいは無料で行うことが多い。

 大切にしたくなる人間関係だと思えるし、相手の言葉もそう匂わせるため、フリーランサーはそうすることを正当化する。だが、この不健全な交渉には、警戒を怠らないことが大切だ。ある程度の距離を置き、必要であれば、報酬を受けられるようになるまで、そのクライアントを左下に移動させよう。

 この作業を行う際には、こう自問して考えてみるといい。たとえば、この仕事には確定した予算が当てられているのか、関わりのある関係者は何人いるのか、誰が最終的に決定を下すのか、などだ。結局のところ重要なのは、自分の時間の使い方を十分な情報に基づいて決めることである。

 人間関係を築き、標準単価を維持し、交渉にかかる労力を適切に振り分れば、価値ある仕事を獲得する準備を進めつつ、フリーランスの醍醐味である自律性を得られるだろう。


HBR.org原文:How to Negotiate as a Freelancer, November 25, 2019.

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アンドレス・ラレス(Andres Lares)
シャピロ・ネゴシエーションズ・インスティテュートのマネージングディレクター。交渉に関するトレーニングやコーチングを行う。顧客には、サンアントニオ・スパーズ、クリーブランド・インディアンズ、PwC、ボーイングなどを含む。ジョンズ・ホプキンズ大学でスポーツ交渉を教える。ツイッタ―は@SNINegotiations