●学生が(当然ながら)大学に非現実的な期待を抱いている

 グローバル・ランキングが存在するにもかかわらず、どの大学も成長、就職、そして成功のエンジンとしてみずからを売り込んでおり、大学教育は依然として、若者の才能をアップグレードすることを約束する。

 これは当然、高い期待を煽るが、現実問題として、その約束を全面的に実現することは不可能だ。誰もがリーダーやCEOやマネジャーになれるわけではないし、引く手数多の知識労働者になれるわけではない。

 たしかに、この100年で大きな発展がもたらされ、人間は単調な組み立てラインの仕事やルーチンワークから、柔軟で意義深いキャリア、そして「誰もが自分の人生の起業家になれる」時代に移行してきたのは間違いない。しかし、全員に夢の仕事を与えるのは不可能だということも、忘れないでおこう。

 野心がチャンスよりも大きければ、そして自分が実際以上の才能を持っていると思い込んでいたら、職場で惨めな思いをするのは間違いないないだろう。ひょっとすると、従業員に消費者のような体験を与えるようと、企業が莫大な投資をするようになったにもかかわらず、従業員の仕事へのエンゲージメントが低下しているのは、そのせいかもしれない。

 恋愛に置き換えると、誰もがブラッド・ピットやアンジェリーナ・ジョリーのような映画スターと付き合いたいと思っているようなものだ。それでは世の中、独り者だらけになってしまうだろう。

 ●名門大学は、教えることを犠牲にして研究に重点を置いていることが多い

 大学に勤めたことがある人なら、大学の質は圧倒的に、教えることよりも研究活動によって決まることを知っているだろう。トップクラスの大学の多くでは、教えることは、研究を発表したり、研究助成金を獲得したりする活動から、時間や労力を奪うものとみなされている。

 トップクラスの教員が魅力を感じるのは、高い給料だけでなく、自由度の大きさと、教える負担の少なさでもある。そのかわり、彼らは研究を大量に発表し、助成金収入をたくさんもたらし、教える仕事は大学院生にやらせる。一方、彼らが研究を発表する学術誌は、疑わしいビジネスモデルに依拠している。こうした学術誌を所有するのは、莫大な収益を上げている営利出版社だ。

 高等教育システム全体が、研究室よりも教室に重点を置かない限り、このダイナミクスに変化をもたらすのは難しいだろう。

 主要学術誌の審査プロセス(独立した専門家による盲査読プロセス)は、科学を発展させる有効な方法である。しかし、分散型知識とオープンソース情報の時代に、科学に基づくインサイトをその資金を拠出している人々(納税者)と共有して民主化することには、明確な恩恵がある。

 また、研究は成長とイノベーションのエンジだが(だからトップクラスの大学は研究に重点を置いているのだが)、それは学生に対する教育を怠る言い訳にされるべきではない。学生が社会に出ていくため準備をする、という重要な課題も同じだ。

 ただし、教育と研究のどちらにどれだけ重点とインセンティブを置くかは、大学の個々の学部が決めることだろう。

 ●大学は能力主義を推進せず、格差を補強している

 大学の学位の付加価値は、学生の社会経済的地位と反比例の関係にある。ほとんどのトップ大学の卒業生は、生まれながらの富、特権、コネにより、いずれにせよキャリア上の高いレベルの成功を享受するだろうからだ。

 最近の米国の大学入学スキャンダルが、実に皮肉だったのは、そのためだ。そもそも、あれほど莫大な賄賂を支払うことができる学生(の家族)は、そんなことをする必要が最もない学生(家族)である。それほどの富、特権、コネがあれば、どの大学に行こうが(行くまいが)、よい人生を送れることは事実上、保証されている。

 同時に、大学は格差を縮小するよりも拡大する傾向がある。複数の研究報告書が指摘するように、金持ちは、金のかかる教育を買う可能性が高いだけでなく、同じくらい金持ちで教育のある人と結婚する可能性が高い。それは、一段と裕福で特権的な子どもを生み出す。

 また、アンソニー・ジャックが近著で指摘するように、名門大学はマイノリティの受け入れに力を入れているものの、その際、「特権的な貧者」を優先する傾向がある。すなわち、社会経済的な地位の高い黒人またはヒスパニックだ。

 根本的な問いは、「ある大学が最高の教育機関だと自負するなら、テストで最低の点数を取った学生を受け入れて、未来のリーダーに育てるべきなのではないか」である。所得もテストの点数もトップクラスの学生は、3~4年大学に行ったりしなくても、世界の未来を支配するだろう。

 つまり、現在の高等教育モデルは、見直すべき部分がたくさんある。未来は、仕事と並行して継続的な教育/学習ループに取り組む企業や個人が握っている。未来の成功は学位ではなく、学習と応用と適応する能力によって定義されるのだから。


HBR.org原文:6 Reasons Why Higher Education Needs to Be Disrupted, November 19, 2019.

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トマス・チャモロ・プレミュジック(Tomas Chamorro-Premuzic)
マンパワー・グループのチーフ・タレント・サイエンティスト。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンとコロンビア大学の経営心理学教授、およびハーバード大学のアントレプレニュアル・ファイナンス・ラボのアソシエイトも兼務する。近著にWhy Do So Many Incompetent Men Become Leaders? (And How to Fix It)(未訳)がある。ツイッター(@drtcp)やウェブサイトでも発信している。

ベッキー・フランクウィッツ(Becky Frankiewicz)
マンパワーグループの北米担当プレジデント。労働市場の専門家。前職ではペプシコ最大の子会社の1つであるクエーカー・フーズの北米トップを務め、『ファスト・カンパニー』誌では「業界で最もクリエイティブな人」の1人に選ばれた。ツイッター・アカウントは@beckyfrankly