(3)変革を「オール・オア・ナッシング」のものと考える

 私たちは、ある行動パターンを改めれば生産性が向上するだろうと思っていても、それを実行することに心理的抵抗を感じることがしばしばある。もっとたっぷり睡眠を取れば生産性が高まるとわかっていても、夜型の生活習慣の持ち主は、早く寝るようアドバイスされると不機嫌になったりする。

 それなら、やりたくないことを実践しようと無理に頑張るのではなく、あまり抵抗なく実践できそうなことを探そう。部屋の照明の光度が自動的に薄暗くなるように(あるいは光の色が暖色系になるように)設定したり、パソコンなどの機器にブルーライト軽減フィルターを取りつけたり、仕事時間の最後の30分を翌日の予定を立てることに費やすようにしたりすれば、眠りたくなる時間を簡単に10~15分早められるかもしれない。

 ベッドに入る時間を2時間早めるか、就寝時間をまったく変えないかの二者択一だと決めつけたり、どうしてもスマートフォンをベッドに持ち込みたいとばかり考えたりすれば、あなたは少しも変われない。心理的抵抗を感じずに達成できる手軽な成功を積み重ねよう。小さな行動変革に成功すれば、ほかの変革にも前向きになれるだろう。

(4)たまにしか発生しない課題のやり方を忘れてしまう

 あなたは、毎日実行している課題に関してはおそらく、効率的なやり方を確立しているだろう。しかし、年に数回しか発生しない課題の場合はどうか。

 著書The Healthy Mind Toolkit(未訳)で打ち明けたように、以前の私は、プリンタのローラーの掃除をするとき、いつもインターネットでマニュアルを探さなくてはならず、少なくとも10分は時間を無駄にしていた。でも、いまは違う。マニュアルをメールで自分宛に送信して保存してある。そのメールの件名はズバリ、「プリンターのローラーの掃除法」。おかげで、いちいちプリンターの型番を調べて、グーグル検索する手間を省けるようになった。

 将来また同じことをする必要があるとわかっているときは、最も効率のよい方法を自分用のマニュアルとして記録し、検索しやすい場所に保存しよう。

(5)少しのエネルギーと時間の浪費を軽く考える

 緊急ではないけれど重要なプロジェクトを推進したり、自分のスキルを磨いたりするために、日々少しずつ時間を費やすだけでも、何もしない場合に比べると成果が飛躍的に高まる可能性がある。裏を返せば、日々わずかでもエネルギーと時間を浪費し続ければ、一般に思われている以上に大きなダメージが生じかねない。

 家の鍵を探すのに手間取ったり、緊急性の乏しい電子メールに返信したりするために費やす10分間は、それ自体は大した問題でなさそうに思える。しかし、それが繰り返されると、集中が妨げられたり、自己評価が低下したり、活力が奪われたりする。

 意思決定を求められる機会を減らしたり、課題を整理したり、シンプルにしたり、課題をいくつかまとめて処理したり、機械の導入やアウトソーシングを推し進めたり、チェックリストを活用したりするなど、エネルギーと時間のささやかな浪費を減らす仕組みをつくろう。そうすれば、時間の節約になる以上に、思考が明晰になるという大きな恩恵がある。

 以上で紹介したアドバイスだけで、あなたが抱えている生産性の問題がすべて解決するわけではないだろう。それでも、それを参考にすれば、最も重要な課題を達成できる可能性が高まるかもしれない。


HBR.org原文:5 Mental Mistakes That Kill Your Productivity, November 04, 2019.

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アリス・ボーイズ(Alice Boyes)
博士。臨床心理士から作家に転身した。著書にThe Healthy Mind ToolkitThe Anxiety Toolkit(ともに未訳)がある。