(1)仕事に集中できる時間を実際より多く見積もる

 長丁場の創造的なプロジェクトや戦略的思考、スキルの習得や人間関係の構築などは、まとまった時間、集中して取り組まないとうまくいかない。

 人はしばしば、1日中とは言わないまでも、1日に数時間はその種の仕事に費やせると思いがちだ。そして、そのような楽観的な想定に基づいて、仕事の優先順位を決めている。

 しかし、往々にして業務時間のかなりの部分は、会議や打ち合わせ、メールやビジネス向けチャットサービス「スラック」でのやり取り、上司や同僚などの「ちょっとした質問」への応答などで奪われてしまう。PCの使用状況を記録するサービス「レスキュータイム」の集計データによれば、職場で中断なしに集中できる時間は、1日に平均1時間12分にすぎない。

 この事実を知れば、あなたは取り組むべき課題を厳選し、集中を妨げられない時間を確保することに努めるだろう。集中できる時間が60~90分あるなら、その時間は大きな目標に向けた仕事に振り向けるとよい。時間的に差し迫った定型業務があると、それを片づけたいという誘惑を感じるかもしれないが、その誘惑は払いのけよう。

た だし、手ごわくて重要なプロジェクトにも、多くの場合は事務作業の要素がある(本を執筆するときの参考文献探しは、その典型だ)。この種の作業は、それほど集中力や創造性を要さない。そのような課題を洗い出し、それを細切れの時間に処理するようにしよう。会議と会議の間の15分の空き時間や、中断が入りそうだと思っている自由時間を利用するのだ。

(2)有効だとわかっている方法論を採用しない

 生産性を高める方法を説く自己啓発本をよく読む人は、認知行動心理学の重要な概念になじみがあるだろう。たとえば、「実行意図」を持てば、その行動を実行に移す可能性が高まるとされている。具体的には、いつ、どこで課題を実行するか、障害にぶつかった際にどうやって乗り越えるかなどを計画すればよい。

 ほかには、1日に下す決定の数を減らせば、精神の疲労を緩和し、意思力を強められるという話を読んだことがあるかもしれない。必要な材料を手元に用意するなどして課題を行いやすくすれば、その課題に着手する可能性が高まることもよく知られている。

 しかし、多くの人はこうした方法論を紹介されても、「別に目新しい話ではない」と考えて採用しない場合が多い。実際にその方法論をやり抜いてみないどころか、まったく試してみない。

 重要なプロジェクトに臨むときは、次に取る行動をはっきりさせ、必要なものをすべて手元に用意して、すぐに着手できるようにしておこう。

 たとえば、スピーチのリハーサルを録画したいとしよう。その場合は、リハーサルの場所を確保し、1分くらいテスト録画をして機材に不具合がないか確認し、記録媒体のメモリ容量が足りているかもチェックする。こうした問題は、あなたがプロジェクトに取り掛かる妨げになりかねない。それらを事前に取り除いておけば、せっかく集中できる時間が無駄に失われることを防げる。

 自分がユニークな人間だとか特別な人間だと思いたい人は、みんなが実践しているようなシンプルな方法論を採用することに気が進まないかもしれない。しかし、この落とし穴にはまってはならない。たとえ退屈に思えても、簡単で効果の実証されている戦略を極力採用しよう。複雑な方法論を探すのではなく、シンプルな方法論を創造的に実践する腕を磨いたほうがよい。