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リーダーシップとは、他人に好かれることではない。こんな格言をよく耳にするが、本当にそうなのか。リーダーはパフォーマンスだけを見られているのだろうか。筆者らの調査により、部下が上司を評価する際、むしろ個人的な好みが多分に影響するという興味深い事実が判明した。部下に嫌われるリーダーは、高い代償を払うことになる。


 2007年後半、本稿執筆者の一人であるチャーンはクウェートのキャンプ・ビューリングにいて、観測ヘリコプターOH-58Dカイオワ・ウォリアでイラク国境を越える準備をしていた。

 クウェートは、米国兵士が戦場に配属される直前に、すべての必要な訓練を終了する中継地として機能していた。クウェートで唯一の危険が、砂だった。砂が深く非常に細かいため、足を取られて歩くのに時間がかかる。

 ある朝、砂をかきわけながら飛行場に向かう途中、「我々に必要なのはリーダーシップで、好かれることではない」と書かれた看板がチャーンの目に入った。

 彼はそのとき感じたことを、次のように記している。

「初めて兵士を率いて戦闘に臨む若き中尉だった私は、それまで教えられてきたことを理解していた。リーダーシップとは好かれることではなく、部下の尊敬と信頼を獲得することだと。だがそれでも、好かれることには大きな価値があるように思えた。このリーダーシップの3条件を達成しようとするのは容易ではない。だが、この看板の存在が示すように、軍隊が信奉するのは伝統的なリーダーシップの原則であって、そこに『好かれること』が含まれないのは明白だった」

 時は巡って2018年、チャーンは組織行動学の教授として第2のキャリアを歩んでいる。最近、共著者らとともに『ジャーナル・オブ・アプライド・サイコロジー』に研究結果を発表したが、この研究をきっかけに「好かれること」が戦場や職場でどんな役割を果たすかを問うようになった。

 リーダーシップ研究における最近の傾向を見ると、「オーセンティック(偽りのない)」「エシカル(倫理的)」などリーダーシップの新たなスタイルを定義し、その原則に従うとパフォーマンスがどのように向上するかを実証している。そのため、研究者や専門家が支持するリーダーシップのスタイルが、際限なく増え続けている。

 実際、過去5年間にわたって主要な経営学の学術誌6誌にどのような論文が掲載されたか調べてみると、リーダーシップに関する論文は計134本。そこには「オーセンティック」「トランスフォーメーショナル(変革型)」「カリスマ的」「エシカル」「サーバント(奉仕型)」など、少なくとも29のリーダーシップ理論が提唱されている。

 同じように、過去5年間の間に『ハーバード・ビジネス・レビュー』(HBR)に掲載された論文を調査したところ、少なくとも161本の論文がさまざまなリーダーシップの理論やスタイルを扱っていた。HBRの論文が支持するリーダーシップの形態は学術誌のものと似ているが、「アート型」や「謙虚な」を含め、独自のスタイルのものが数多くあった。

 リーダーシップのいずれの形態にも、リーダーと部下のパフォーマンスの予測因子となるエビデンスがあったが、我々はある問題を認識するようになった。同じようなリーダーシップ研究をいくつか実施した経験から、調査項目の1つを高く評価した部下は、他の項目も高く評価する傾向があることに気がついたのだ。

 たとえば、リーダーは「倫理性が高い」(「私のリーダーは結果だけでなく、そこに至るまでの過程によっても成功を定義する」など)と評価した部下は、そのリーダーを「トランスフォーメーショナル」(「私のリーダーは従業員が自分の強みをさらに開発できるように支援する」など)とも評価する傾向が強かった。要するに、ある領域で高く評価されたリーダーは、他のすべての領域で同じように高く評価されているのだ。

 ここで問題なのは、こうしたリーダーシップのスタイルは、概念としてはそれぞれ明確に異なるということだ。1人のリーダーを部下がどのスタイルについても同じように評価するというのは、その評価に共通する何らかの要因があることになる。言い方を変えると、部下の評価には、リーダーの具体的な行動に対する評価よりも、そのリーダーを好きかどうかが反映されているように見える。

 そこで我々は、リーダーシップ評価の背後で、リーダーへの好意が重要な役割を果たしているのではないかと疑い始めた。