『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2020年1月号の特集タイトルは「顧客体験は進化する:常時接続の時代にビジネスはどう変わるか」である。

 5G(第5世代移動通信システム)やIoT(モノのインターネット)に象徴されるように、デジタルテクノロジーが世の中に浸透することで、企業は顧客とより深くつながることができる。常時接続の時代、これまで以上に顧客体験を充実させるためには、どうすればよいのか。

 マッキンゼー・アンド・カンパニーシニアパートナーの野中賢治氏による「5Gで経営はいかに変わるのか」では、最新技術で企業と顧客との関係性がどう変化するのが論じられる。「超高速通信」と「超低遅延」「多数同時接続」の3つの特徴を持つ5G開始によって、本格的な常時接続時代が到来する。とりわけ製造業への影響が大きく、2035年までに全体で13.2兆ドルのビジネスインパクトを与えるという。常時接続された時代において、法人を含めた顧客体験はいかに進化するのか。

 ペンシルバニア大学ウォートンスクールのニコライ・シゲルコ教授らによる「コネクテッド戦略:顧客と深く、長くつながる」では、企業が顧客とますます深くつながることができるようになる時代に、顧客体験を飛躍的に向上させ、業務効率を高め、コストを下げることができる「コネクテッド戦略」を提唱する。重要なことは、革新的なテクノロジーをどのように使って、顧客と継続的な関係を築くか、ということである。

 元マルケト福田康隆社長による「顧客とつながり続ける時代に持続的成長を実現する」では、売り切り型のビジネスモデルから顧客とつながり続けるサブスクリプション・ビジネスへの転換が加速する中、これからの時代に必要な顧客体験とその組織のあり方について「カスタマーサクセス」をキーワードに解き明かす。

 ユー・エス・ジェイでデジタルマーケティングマネージャーを務める柿丸繁氏による「USJは顧客体験をデータドリブンで進化させる」では、オフラインとオンラインを融合し、データの力で顧客体験を向上させた具体策が語られる。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は、国内はもちろん海外からも多くの観光客が訪れる、日本を代表するテーマパークだ。これまで、テレビCMなど従来型マーケティングで大きな成果を上げてきた一方、デジタルマーケティングには課題を残していた。テーマパークの顧客体験はオフラインが中心であり、オンラインデータの取得自体が困難であったことが、その要因の一つである。柿丸繁氏は、その課題をクリアして、来場者一人ひとりに適したサービス提案を実現している。

「CRMをビジネスの成長に結び付ける方法」「テクノロジーがフィールドセールスとインサイドセールスの境界を曖昧にする」「AIを活用した顧客体験の創造」という3本の寄稿を収録した「顧客とどのようにつながり続けるか」では、さまざまな観点から企業と顧客とのつながりを探る。顧客との間に信頼関係をつくり、顧客満足度と顧客ロイヤルティを高めようという戦略は、以前からマーケティングの手法であった。デジタル化の進んだ現在は、テクノロジーを用いた顧客との関係づくりも進化している。

 元ハーバード・ビジネス・スクールのセオドア・レビット名誉教授による「顧客との絆をマネジメントする」は、名著論文の再掲載である。マーケティングの重要性、顧客の視点、サービス、顧客満足など、時代に先駆けたコンセプトを次々と発表したレビットだが、いち早く現在のCRMのアイデアを提示したのが、1983年に発表した本稿である(日本語訳初出は本誌1994年6−7月号)。今後、製品の価値は、テクノロジーとサービスに負うところが大きくなることを予見し、顧客と企業の商品購入後のリレーションが、成功の秘訣であることを示唆した。