医療AIに対する患者の抵抗を減らすために、医療従事者が講じることのできる対策はいくつもある。

 たとえば、AIは一人ひとりに合った医療を提供できるという認識を高める行動を医療従事者が取れば、平均的な人や、統計の一部として扱われるかもしれないという人たちの懸念をやわらげることができる。我々が行った実験で、冠動脈バイパス手術を受けるべきかに関するアドバイスを、AIが各患者ならではの体質や病歴を考慮に入れて臨機応変に対応できると説明した場合、実験参加者は人間の医師が提示する治療法と同じように、AIが示した治療法に従うようになった。

 そこで、AIだけに基づく医療を提供する場合(たとえば、チャットボットによる診断、アルゴリズムに基づく予測モデル、アプリに基づく処置、ウェアラブルデバイスからのフィードバックなど)は、ライフスタイルや家族歴、遺伝子やゲノムのプロフィール、環境に関する詳細といった情報から、患者固有のプロフィールを作成していることを強調するといいだろう。そうすれば、患者の病歴を知っているかかりつけ医師のような人間の医療サービス提供者が考慮に入れる情報を、AIも考慮に入れると患者が感じるかもしれない。この情報は、提案する治療が各患者の固有なプロフィールにいかに対応しているかを、患者により的確に説明する際に使えるだろう。

 医療AIサービスに、たとえば「あなたのユニークなプロフィールに基づく」という言葉を織り込むという手もある。さらに、AIがそれぞれの患者に合わせた医療を提供できるという事実を広めるために、医療組織が特別な取り組みを打ち出すこともできる。たとえば、メディアにエビデンスを提供したり、アルゴリズムがどのように働くかを説明したり、サービスに対する患者の評価を公開したりすることだ。

 AIが導き出した治療法を医師が最終確認することで、AIによる医療を受け入れやすくもなるだろう。医師が最終決定を下すならば、人々は医療AIの利用を憂慮しないことが研究でも明らかになっている。我々の論文で述べた研究の一つでは、皮膚がんチェックのための体のスキャンをアルゴリズムが分析して、治療法を提案し、それをもとに医師が最終決定するという治療法なら、最初から最後まで医師が行った場合と同様に受け入れるだろうと実験参加者は答えていた。

 AIに基づく医療テクノロジーは目覚ましい進歩を遂げ、広く使われ始めている。AIが介在する外科手術では、AIが手術中に外科医を誘導して器具を使い、過去の手術のデータをもとに新しい手術技術を示すこともできる。AIに基づく遠隔医療は、医療機関に容易にアクセスできない地域での初期診療を容易にサポートできる。バーチャル准看護師は毎日24時間患者とやり取りを交わし、24時間体制でモニタリングし、質問に答えることができる。

 だが、こうした患者と直接向き合う医療AIサービスを最大現活用するためにまずすべきことは、人間の代わりにアルゴリズムが治療方法を決めることに対する、患者の懐疑心を取り除くことである。


HBR.org原文:AI Can Outperform Doctors. So Why Don't Patients Trust It? October 30, 2019.

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キアラ・ロンゴーニ(Chiara Longoni)
ボストン大学助教授。マーケティングを担当。ツイッター@longoni_chiaraでも発信中。

キャリー K. モアウェッジ(Carey K. Morewedge)
ボストン大学教授。マーケティングを担当。エベレット W. ロード記念講座特別ファカルティスカラー。ツイッター@morewedgeでも発信中。