人間ではなくAIが医療に当たる場合、患者はそもそも診察を受けようとしなくなり、支払いも安く済むことを期待した。また、たとえ誤診されたり外科治療で合併症になったりするリスクが高まったとしても、人間の医師に診察されることを好むこともわかった。

 その理由は、AIによる医療の質が劣ると信じているからではなかった。人間の医師と比べて、AIは高額かつ不便で、必要な情報を提供しないと患者が見なしているわけでもなかった。医療AIに抵抗があるのは、AIが他人とは異なる自分特有の体質や状況を理解できない、と信じているからのようだ。

 人は自分をユニークな存在だと信じており、そのユニークさには健康問題も含まれることがわかった。誰もが風邪をひく。しかし「自分」の風邪はユニークで、ユニークな形で「自分」を苦しめている、というわけだ。対照的に、AIによる医療は柔軟性を欠き、標準化されていると考えられている。平均的な患者の対応には適しているが、個々人のユニークな状況を考慮に入れることはまだできないと見ているのだ。

 我々が行った調査の結果が、それを如実に表している。

 ボストン大学とニューヨーク大学のビジネススクールに通う学生200人以上に対して、我々は、ストレスレベルの診断と、それをコントロールするためのアドバイスを無料で受けられる機会を提供した。

 その結果、人間の医師が診断すると知らされた人たちの40%が参加したが、コンピュータによる診断と知らされた人たちは26%しか参加しなかった(いずれの場合も、参加費は無料であること、これまでの診断とアドバイスが正しかった確率がいずれも82%から85%であることが、実験の条件として通知された)。

 我々の別の研究では、あるオンラインパネルの米国人700人以上を対象に、AIが明らかに人間よりも優れた結果を導き出しているとき、患者がAIを選ぶかどうかをテストした。

 参加者には医療提供者2者(XとYと呼ぶ)の実績に関する情報を検討してもらった。具体的には、これらの医療提供者2者が過去に行った皮膚がん診断、救急患者の治療の優先順位を判断するトリアージの精度、またはペースメーカー移植手術に伴う合併症発生率に関するものだった。

 その後、参加者には提供者2者のうちどちらを好むかを、1から7までの7段階評価(1はXを好む、4はどちらも同じ、7はYを好む)で示してもらった。実績に差がある人間の医師2人から選ぶ場合、参加者全員が高い実績の医師を好んだ。しかし、人間の医師とAI(たとえばアルゴリズム、チャットボット、コンピュータプログラムで遠隔操作されるロボットアーム)の二者択一の場合、実績の高いAIが選ばれる割合は著しく低かった。つまり、参加者は医療の質を犠牲にしてでも、AIではなく人間を選んだのである。

 医療AIに対する抵抗は、同じ検査にいくらなら支払うかという問いへの回答にも現れている。

 我々はあるオンラインパネルの米国人103人に、ストレス診断テストに50ドルという参考価格を提示した。これはAIでも人間でも行えるテストで、どちらも精度が89%だった。

 最初にAIによる診断を割り振られた参加者たちは、AIによる診断料が50ドルだと知らされた。その後、AIではなく人間による診断に変更する場合に、いくらなら支払うか金額を提示してもらった。すると、最初にAIを割り振られてから人間の診断に変更するために支払う金額のほうが、最初に人間の診断を割り振られてからAIに変更するために支払う金額より高かった。

 自分の状況はユニークだという考え方がいかに重要かは、自分がユニークで他人とは違うと思う参加者ほど、AIに対する抵抗感が強かったことからもわかる。

 我々はオンラインパネルの米国人243人に、皮膚がんのスクリーニング提供者2者のうち、どちらを選好するかを尋ねた。どちらも診断の精度は90%だった。参加者が自分をユニークだと信じている度合いをもとにすると(同じ精度の)AIよりも人間を選好する度合いを的確に予想できた。人間2人の場合、選好に影響はなかった。