ハーバード・ビジネス・レビューEIシリーズに、ビジネスリーダーが習得すべきスキルとして注目される「レジリエンス」(再起力)をテーマとした最新刊を発売、その刊行記念セミナーを11月20日に開催した。同書の巻頭「日本語版に寄せて」を記し、「弱いロボット」研究の第一人者である豊橋技術科学大学の岡田美智男教授が、レジリエンスの強い組織や社会を作るための要諦について講演した。(構成:富岡修、写真:斎藤美春)


レジリエンス」という言葉が注目されている。再起力、回復力、復元力、立ち直る力など、さまざまな言葉で訳されており、困難な状況や悲劇的な事態に直面した際に必要なスキルとされている。昨今では、日常生活からビジネス、社会レベルまで、いろいろな場面で使われるようになってきた。

岡田美智男(おかだ・みちお)
豊橋技術科学大学情報・知能工学系教授。福島県生まれ。東北大学大学院工学研究科博士後期課程修了後、NTT基礎研究所、国際電気通信基礎技術研究所 主任研究員、室長、京都大学大学院情報学研究科 客員助教授等を経て、2006年より現職。まわりの手助けを引きだしながらゴミを拾い集めてしまう〈ゴミ箱ロボット〉、モジモジしながらティッシュを配ろうとする〈アイ・ボーンズ〉など、〈弱いロボット〉と人とのコミュニケーションや関係性を研究。『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』(講談社現代新書)、『弱いロボット』(医学書院)、『ロボットの悲しみ』(新曜社)ほか。

 豊橋技術科学大学の岡田美智男教授は、レジリエンスについてこのように語る。

「レジリエンスとは、不運が重なり、心が折れそうになっても、なんとか踏みとどまれる力です。ただ、レジリエンスを個人に帰属する能力や資質とみなされることが多いのですが、むしろ、他者や周囲の環境との関係性のなかに宿る性質だと理解することが大切ではないでしょうか」

 つまり、レジリエンスを個々人が高めることも大事だが、それ以上に、他者と関わるなかで相互に育み、その結果としてレジリエンスの強い組織や社会を作ることによりつながるという。

 レジリエンスという言葉のイメージをロボットで例えると、高度な知能を持ち、攻撃されて倒れても立ち上がる強靭なターミネーターのようなロボットを想像するかもしれない。しかし、それは想像の世界の話であって、実際のロボット開発においては、むしろ<弱いロボット>の方が、レジリエンスが高い場合が多いと、岡田教授は説明する。

 <弱いロボット>とは、知能や機構はさほど複雑ではなく、単体では単純な動作しかできないが、周囲の環境や他者をうまく利用することで、目的とするタスクや複雑な作業をこなす。岡田教授は、いくつかのスライドを示しながら具体例を挙げた。

 たとえば、山道など不整地での歩行は、ホンダのアシモのような高度な歩行技術を持つ人型ロボットでも難しい。しかし、生物的にはより原始的な、ゴキブリの動きを模した小型の6足ロボットは、それを簡単にやってのける。動きも単純で、岩にぶつかったら、足をもう少し高く上げる。そこで転倒しそうになったら、6本あるうちの上がっている足をすかさず下ろしてバランスを取るというものだ。

「生物のしなやかな動きから学べることは、さまざまな環境変化に適応するには、あらゆる変化に備えられるようあらかじめ作り込んでおくのではなく、むしろ作り込みは最小限にして、環境の変化に委ねてしまうほうがいいということでした」