AIによる「魅力度測定」の試みは、こうしたニーズから生まれた。そして、特定の文化で魅力的(または魅力的でない)と見なされることには、人種的な好みが反映されていることを明らかにした。人間がAIに、人間の評価を模倣するよう教えれば、AIは人間のバイアスをコピーするだけでなく、拡張して悪化させるだろう。

 ルックスをバイアス要因と見なすべきか、仕事と関連した特性と見なすべきかの判断も難しい。従業員の勤務評定が、顧客やクライアントが従業員に抱いた印象に左右される場合は、なおさらだ。

 企業評判サイト「グラスドア」の報告書は、「ビューティー・バイアスを法的に規制すれば、大打撃を被る業界や企業は多い」と指摘する。

 実際、ルックスの評価と、社会的に望ましい人間性(感情的な安定性や外向性、野心など)の評価の間には、ポジティブな相関関係があると進化学者らは指摘する。たとえば、魅力なルックスは、心の知能指数(EQ)や好感度といった心理的な魅力と同じように、より多くの売上げ資金調達を助ける。だとすれば、販売員や資金調達担当者にルックスのいい人物を採用するプラクティスを禁止することは、賢明な措置といえるのか。

 ひょっとすると、賢明な措置なのかもしれない。なぜなら、ルックスによる採用を禁止しなければ、さほど魅力的なルックスと見なされない人(マイノリティ出身者など社会の支配的な「美しさの規範」に合致しない人)が差別されることになるからだ。

 ただし、ルックスは不問で、過去の実績や面接など客観的(つまりバイアスなしの)データに基づき採用を行うことにしたとしても、問題が解決するわけではない。そんなやり方は、「人種や出身階級は問わず、学歴だけで採用する」と言っているようなものだ。それは、学歴には人種や社会階級が大きく影響している事実を無視している。

 魅力的なルックスの人が、不当なアドバンテージを得ていること、そしてルックスがいまいちの人が不当なハンディを負わされていることは明白だ。だが、採用活動から魅力関連のデータを廃止して、過去の勤務評定や職歴だけで評価することにすれば、ビューティー・バイアスをある程度緩和することはできるかもしれない。

 しかし、こうした経歴も過去の職場のバイアスに影響を受けている以上、完全にバイアスを取り去ることはできない。ルックスのいい人が、以前の職場で不当に高評価を受けていたなら、履歴書には優れた勤務評定が並ぶことになるからだ。ただ、だからといってこの問題を避けて通るべきではないし、職場におけるビューティー・バイアスを放置すべきではない。

 重要なことに、AIは人の能力や勤務評定に影響を与えるバイアスのレベルを明らかにできる。正しくプログラムすれば、AIは私たちが、未知の自分を測定する客観的なツールになる。

 体重を減らしたいときは、体重計が現実を直視する助けになる。運動を増やしたいときは、活動量計が日々の運動量をチェックする助けになる。そして採用活動における意識的・無意識的バイアスを克服するためには、正しく訓練されたAIが大きな助けになるのだ。


HBR.org原文:Attractive People Get Unfair Advantages at Work. AI Can Help, October 31, 2019.

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